「今年も色々あったなー」
「色々って?」
天井を仰ぎながら見ているディーノに、雲雀は素っ気なく問い掛けた。テレビもつけないでしている炬燵に入りながらの会話だ。
ディーノは目の前にあった蜜柑を手に取る。当然の行為でその皮を剥きながら、雲雀への答えを考えた。
「んー…色々は、色々だよ」
「何それ。意味が分からない」
「ははっ!それくらい語り切れねぇことがあったんだ。楽しいことも、辛いことも、全部」
その事実は、はたして色々あったと言えるのだろうか。この道を行くと決めた時点で、生涯変わらない事実かもしれないのに。
ディーノの顔に憂いが浮かぶ。
だが、雲雀は違った。
「忙しそうだね」
「え?」
「顔が」
「は!?」
雲雀は小さく笑った。そのままディーノが剥き終えた蜜柑の中味の一つを、何も言わずに摘まむ。感想は、なかなか甘いね、だった。
それに対してディーノは何もできなかった。大抵の人間ならば、同じく憂い顔をするのに、今、目の前にいる彼は、そんな表情を見せようともしないのだ。
分かっていたような、いなかったような。唖然する反面、何かが、ああそうか、と言った。
雲雀は蜜柑を食べ終えて言う。
「貴方はそのままでいればいいよ」
―変わらずに、喜ぶところは喜んで、悲しむところは悲しんで、貴方らしくいればいい。それが貴方の強さなんでしょ?
―そう、かもな。
明日は変わる。
でも、変わらない。
自分が自分であること。
君の言葉で、何かに気が付けた気がした。
(明けましておめでとうございます!
今年もよろしくお願い致します!
2010.1.1 みさきうみ)