「…えっと?」 目の前にえへへと笑う月子がいる。テーブルの上には赤いカーネーションが二本。 俺はわけが分からなかった。 「月子?」 「ん?」 「これは…何?」 「カーネーション!可愛いよね!」 そう言って笑うお前が可愛いよ。 いやいや、違う。 問題は、何故俺が月子からカーネーションを受け取るはめになっているのか、だ。 花と彼女を交互に見ても、月子は笑うだけで、何がどう自分と繋がっているのかが分からない。 …直接聞くしかないか。 「月子、何で俺にカーネーションをくれるんだ?」 「ふふふ!今日は何の日でしょーか!?」 「え?」 月子からいきなり出されたクイズ。答えないわけにはいかない。 でも、答えはすぐに出なかったので、壁に掛けてあるカレンダーを見た。 すると、今日の日付に印刷されていたのは。 「…母の日」 「ピンポーン!正解!」 嫌な予感がする。 「月子、これはもしかして…」 「いつもありがとうね、錫也お母さん!」 …やっぱり。 これには肩をガックリ落とすしかなかった。 こいつからのプレゼントはとても嬉しいけれど、母の日だからという理由は複雑な気持ちにさせてくれる。 毎度毎度言ってるような気がするけど、性別違うから。俺は普通の男子高校生です。 そう否定しようと口を開きかけた時、先に月子が喋りだした。 「いつもいつも私のことを考えてくれてありがとう。多分、哉太や羊くんも思ってるよ。私達の好きなものをいつも作ってくれるよね。嫌いなものを作らなきゃいけない時は、食べれるように工夫してくれたり。…それから、私の、か、彼氏になってからも、愛し、て、くれて嬉しいです。私、錫也の優しさがない世界なんて考えられないの。錫也の優しさが当たり前すぎて忘れかけてた時もあったけど、錫也がいたから私はこれまで笑って過ごしてこれたんだよ。ありがとう、錫也、私の傍にいてくれて。―…大好き!」 俺は面を食らった。 最後の「大好き」なんて、俺には効果覿面だ。 まさか、こんなにも嬉しい言葉が聞けるなんて思ってみなかった。 言葉に出来ない、こいつを愛しく想う気持ちが身体中を駆け巡って、思い切り月子を抱き締めた。 こいつはなんて優しいんだろう。 「錫也!?」 「―…ごめん。でも、お前がイケナイ」 「え?」 「俺をこんなに嬉しくさせたお前がいけないんだよ」 本当はお前が悪いなんてことはない。我慢できない俺がいけないんだ。 分かってる。 分かってるんだけど。 もう、止まらない。 キスは、深く深く、俺の心を満たしてくれた。 一意専心 (この愛を君に尽くそう) 企画「君を構成したい。」 参加させて下さり ありがとうございました! 錫也、だいすきです!! ― みさきうみ ― |