REBORN

□おかえり
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終わった。
山を一つ越えて一段落した俺は、久しぶりに我が家へ帰って来た。
離れていた期間は約2週間。これからその間に貯まりに貯まった雑務をやらなければいけないが、これまでのことを思うとなんてことはない。平和っていいな〜と思うくらいだ。
開け慣れた扉をゆっくりと押した。

「ボス!」
「よぉ!ただいま。随分離れてて悪かったな」
「別にいいってことよ!無事に帰って来てくれりゃあ十分さ」
「そうそう。これで滞ってたやつができるな!」
「ボス!早くやってくれよ!」
「おいおい…、休みなしかよ」

笑う部下達。
こいつらの豪快に笑う姿を見ると、頑張って良かったと感じる。俺はこの光景を守りたくてボスになったのだから。

「冗談だよ、ボス。ほれ、一旦休め休め」
「…ったく。じゃあ遠慮なく休ませてもらうぜ」
「お疲れさん」
「おぅ!」

今まで気を張るように締め付けていたネクタイを緩めながらホールを後にした。

自室に着くまでの間にすれ違った部下や使用人達は、皆笑顔で俺を迎えてくれた。
だが、自室は全く違っていた。

「遅い」
「……………は?」

自室のドアを開けて俺は固まった。中に意外すぎる人物がいたためだ。

「きょーやぁ?」
「何その間抜けな声」

自分でもそう思う。それくらい驚いたのだ。
雲雀恭弥。こいつがいたことに。
珍しい。珍しすぎる。
とりあえず固まっていた身体を動かしてドアを閉める。そして恭弥へ近付いた。

「恭弥、どうしたお前…」
「別に。来ちゃいけないわけ?」
「いやいやいや、別にそんなんじゃねーよ!むしろ大歓迎!!ただここに来るなんて滅多にねぇから…」
「そうだね。……ねぇ、今まで戦ってたのってミルフィオーレ?」

恭弥の目が鋭くなる。奴が咬み殺したい相手を見据える時によく見掛けた。
他人が怖いと言っても、俺は綺麗だと思う。芯がある。
今、瞳は俺を映していても、脳裏にあるのは最大の敵。俺達が交戦していることを知って、情報を得に来た。そんなところだろう。
俺はいつも座っている椅子に腰掛けてその時の状況を語った。

「最初は膠着状態が続いた。だが、相手が先に動いて隙が出来たおかげで勝てた」
「負傷者とかは?」
「なし」
「さすが」

恭弥から誉めの言葉が聞けるなんて、初めて会った頃は思わなかった。こういう時、時間が経ったんだなと思う。今の自分の顔は微笑んでいることだろう。
恭弥は移動して、俺が座る椅子の手すりに浅く腰掛けた。

「で?相手はどうなったの?」
「こちらが完全に勝利すると分かった途端撤退した。いつもより動きが早かったな…」
「…………ふ〜ん」
「恭弥?」
「別に。じゃ行くね」
「えっ、もうかよ!」

立ち上がった恭弥を呼び止めた。変わらない顔で俺を見下ろす。

「僕はあなたみたいに休んでいる暇がないんだよ」
「…俺だってやることあるんだよ」
「でも、疲れてるんでしょ?」
「へ?」

恭弥に抱き締められた。前には机があるから、横から。痛くない。とても優しい抱擁。心地良い。
感覚で分かる、髪に埋まる恭弥の顔。一体どんな表情をしているんだろう。
恭弥の香りがする。

「死んだら許さない」
「うん」
「僕が咬み殺すんだから」
「こえーな」
「光栄に思いなよ」
「はははっ!そうか」
「………良かった」

最後に小さく小さく言った言葉は、しっかりと耳に届いていた。恭弥は恭弥なりに心配をしてくれたんだな。だからここへ来てくれたんだよな。

「ありがとな、恭弥」
「…ん」

キス。軽く触れるだけの。
その後は目を開けずに額を合わせる。温かさが身体の奥まで伝わってくるようだ。
俺は、今が一番感じている。

「おかえり、ディーノ」
「ただいま、恭弥」





帰って来たんだ、と。











これはツナ達が10年前からやって来る少し前の話。
もう少ししたら目の前にいる恭弥はいなくなり、まだ風紀委員長の恭弥が来る。
しばらく感じられぬことになる温もりを、俺は愛しいと思った。







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