REBORN

□突然訪問
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山。山山。山山山。
紙の山!

「ん。これ終わり」
「あいよ」
「これもいいぜ」
「ありがとうございます」

この会話が何回続いているかなんてもう分からない。とにかく、デスク上に広がる書類の山にディーノは埋もれていた。
久しぶりに帰って来て、まず出迎えてくれたのはこれら。だが、こんなことになることは覚悟の内で、げんなりしたことはない。ちょっと気分転換に黒フレームの眼鏡を掛けて、ペンを持った。
そして今に至る。

「これ、大丈夫」
「了解」
「あ、ミス発見!おいおい、直しておいてくれよ…。やり直し!」
「かしこまりました」
「…ったく。こんだけみてもまだミスを発見できんなんて神業だな」
「全くです」

ボスのサインが入った書類を受け取っている部下2人は、感嘆の溜め息をついた。かれこれ始まってから小1時間。集中力が切れる様子が全くみられない。昔では考えられない変貌っぷりである。
2人に見つめられる中、また1枚の書類が出てきた。

「よし。これも大丈夫」
「おう。…なぁ、ボス。少しは休憩したらどうだ?」
「ん?」
「そんなに頭働かせてたら、後々持たねぇぞ」
「ん〜…まだ平気だけどなぁ…。ほんじゃ、軽く休むか」
「そうして下さい」

部下の一方は、書類を必要な奴らに渡して来ると言い、もう一方はそれに加えて終了したらお茶を持って来ると言って部屋を後にした。
部下を見送ったディーノは、だらしない座り方をして、ぼんやりと書類を見つめた。
まだ大丈夫。そう思っていたが、実は違うらしい。気が付けば目の前がぼやけて頭の中に文字が入ってこなくなっていた。

(疲れてたんだなぁ…俺)

自覚したが最後。
ディーノの目蓋は完全に閉じられた。



+++



何だか重たい気がする。身体全体に何かがのし掛かっている。
何だ?
ゆっくりと目蓋を開けていく。だが、視界が明るくなっていいはずなのに、真っ暗だ。目を閉じる時と違うのは、ふかふかした感じがすること。布団ではない。けれど感じたことはある。しかもつい最近。

「…………………?」

目がまだとろんとしていることが、自分自身でもよく分かる。だが、ふかふかの正体が気になるので、ディーノは少し顔を離した。
正体を知った瞬間、彼は完全に目を覚ます。

「…恭弥っ!!??」

足の間に座って、もたれ掛かりながら気持ち良さそうに眠る少年。真っ暗の原因は黒髪だった。

(何でいるんだっ…!?)

つい最近まで滞在していた日本。そこで幾度となく会った。そして今、彼は日本にいるはずだ。
頭が追い付かない。

「何固まってるの?」
「ワオ!!!!」
「ウルサイ」

雲雀は欠伸をしながら立ち上がり、窓辺へ歩く。

「いつ起きたんだ…?」
「あなたが僕の名前を呼んだ時。あんな大きな声を出されたら、誰だって起きるよ」
「あ、そうですか…」

雲雀に向けられていた身体をデスクに向け直す。
そして沈黙。

「…で!何で恭弥がイタリアにいるんだ!?」

しばらくの静かな時間を打ち破ったのはディーノ。再び雲雀へ椅子ごと身体を向けて、少年を見つめた。

「…別に。旅行がしたくなっただけだよ。あてがないから来たの」
「…珍しいな」
「悪い?」
「いや、別に悪くないさ。それにお前はもうじきボンゴレの幹部になる。イタリアが中心となるだろうから見て回っておいた方がいい」
「ふ〜ん…」

ディーノは立ち上がって伸びをした。そのまま扉へ向かう。

「どこ行くの?」
「え?起きたっていう報告と、恭弥と俺の分の茶を貰いに。すぐ戻って来るから…ほら、待ってろ」

ディーノが近付いてきた。
眼鏡を外しながら歩いて、待ってろと言われたと同時に、今度は雲雀の耳に掛けられた。
微笑みを残して部屋を去る跳ね馬。世間ではイケメンと称されるくらいカッコいいスタイルをしているから、それがなんだか決まってた。
雲雀は彼の眼鏡に触れる。

「…美味しくなきゃ、飲まないからね…」

頬が熱いのが分かった。












本当は。
本当は、何だか物足りなくなったからイタリアに来た。
ぱっと思い付いたのがあなただったんだ…







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