Starry Sky

□似合うのって罪
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「…アルバイト?」
「そう、アルバイト」

日曜日。もう恒例となりつつある可愛い恋人の部屋訪問の時間。
とてもとても大切な時間に、昨日決まったことを俺は告げた。俺の予想では「頑張れ」と言うとなっていたのだけど、現実はその予想を裏切った。恋人はキョトンとした顔で俺を見つめてくる。
その顔もとても可愛いんだけど、なんでキョトンとするんだ?俺の記憶では、確かバイトの面接の練習も付き合ってくれたはずなのに…。
予想外の反応に、俺もキョトンとしてしまった。

「月子?」
「…バイトって…」

月子はゆっくりと言葉を選ぶように話し出す。目が真剣そのものだったので、次の言葉が出るのを静かに待った。
…一体どうしたんだ?

「バイトって…」
「うん」
「言ってたショッピングセンターのカフェ?」
「うん、そうだけど…」

肯定した途端、月子は肩を落としてしまった。深い溜め息までついている。
悪いことを言ってしまったのかもしれない。
そう感じて俺は慌ててその肩を支えて問い掛けた。

「月子、どうしたんだ?俺嫌なことを言っちゃった?」
「ううん、違うの!」
「…ならどうして泣きそうな顔をしてるんだよ」

そう言うと月子は本格的に泣き出してしまった。
俺は大したことはできない人間だから、悲しんでいるその身体を抱き締めることしかできない。それから背中をポンポンとあやすだけ。
だけど月子はしがみついてきてくれて、それが少し嬉しかった。

しばらくして、月子の涙も治まってきた。少しだけ身体を離し、タイミングをみて俺は問う。

「月子、どうした?」

答えない。もう一度訊いてもまた返事がない。
なのにだんだんこいつの身体が熱くなってきていると感じるのは気のせいか?
俺は更に訊いた。

「月子?本当に…」
「カフェの制服、ギャルソンだったよね?」
「え?あ、うん」

ドヨンとした空気再来。
だから一体何だと言うのだろう?こいつの思っていることが分からない。
もし俺が原因で月子を落ち込ませているのなら、俺の手で元気にしてやりたい。
それは俺の長年の想いであり、故にポリシーだ。今だってその気持ちに揺らぎはない。

「ごめんな」

落ち込ませて。
そっと俯く顔を覗き込んで言う。だが優しいこいつはハッと顔をあげて首を振った。

「違うの!ただ…」
「ただ…?」
「ただ、ギャルソン姿の錫也をしたらかっこよくて…絶対モテちゃうなぁって…」
「…へ?」

何なんだ、この可愛い生き物は。
これはつまりヤキモチ、ということになるんだろうか?
俺の勝手な憶測だったとしても、嬉しくて顔がにやけてしまう。

「月子は俺がモテるのが嫌なんだ?」
「当然だよ!」
「うん、分かるよ。つまり、俺が他の女の人に目を奪われないか心配なんだ?」
「…うん」

ああ、可愛い。今度は顔がりんごのように真っ赤だ。
コツンと額を合わせて、間近で瞳を合わせる。
熱いけれど、それが嬉しい現金な俺でごめんな?でも止められないんだ。

「ヤキモチって取ってもいい?」
「…うん」
「大丈夫。俺は月子しか愛してるって想わない」
「恥、恥ずかしいよ…」
「なに恥ずかしがってんだよ。お前と俺しかいないのに。…キスしていい?」
「聞かないで…」

そっと唇を近付けて、わずかに触れるところで囁いた。

「愛してるよ」
「…っ!」

その後感じたのは、甘い甘い深淵のキス。







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