「月子、コーヒー飲むか?」
「うん、欲しいな」
「了解」
キッチンに立つ錫也の姿は、もう当たり前。否、昔から当然だったんだけど、カウンターに腰掛けながら見る姿が、当たり前。
「はい、お待たせ。ミルクたっぷり入れといたぞ」
「わーい!ありがとう」
「どういたしまして。熱いから気を付けろよ」
「うん」
一口飲むと、コーヒーの苦さとミルクの甘さがくるくる回りながら喉を通った。絶妙なバランスが美味しい。さすがは錫也お母さんだ。
「旨いか?」
「うん!」
「そりゃ良かった。…いいな、こういう時間」
「なあに、突然」
いいや、何でもないって錫也は首を振る。でも、瞳は甘くて優しくて。幸せを実感してるみたい。
分かる、分かるよ、錫也。私も幸せだよ。二人でこうしてのんびりしている時間は、凄く暖かいんだよね。
「月子」
「何?」
「見すぎ」
「え!嘘!」
「嘘じゃないよ。じっと見られると、照れるだろ」
「ご、ごめん…」
「謝んなくていいよ、嫌じゃないから。それに…キス、したくなる」
返事なんか聞かないで、私と錫也の距離はゼロになった。
赤と青の色違いマグカップが、仲良くテーブルの上で並んでる。
(ミルクコーヒー味だ)
(錫也っ!)
(…ちょっと甘くしすぎたかな?)
(いつも、甘いよ…、錫也のキス)
◆相合い傘なんて
01.赤いカップ
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