Starry Sky

□気持ち伝われ!
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「えーっと、…うん」

「……………」


私は何も言えなかった。誰もがこんな惨劇を目の前にして言葉を言えるわけない。
偶然顔をひょっこり出した錫也だって、ほら、苦笑い。



ああ、なんでなんで。



「月子」

「…はい」

「…何を作ろうとしたの?」

「…ケーキ、です」



料理の腕、上がらないんだろう…。



真っ黒焦げのスポンジに、散乱してしまった材料。電子レンジは焼いている最中に、黒い煙を出した。

もう、上げる顔なんてありません。特にキッチンをお城としている真正面の幼馴染み兼、恋人…には。


「月子」

「…はい」

「材料、まだある?」

「…はい」


勿論、自分の腕前は承知しています。だから失敗することも考えて、多めに材料は用意してあった。
おずおずと指差し、そこにあるレジ袋と冷蔵庫を見ると、錫也は「よし」と言った。


「錫也?」

「一緒に作ろうか」

「えっ!?」

「えっ…て、ダメだったか?」

「…えっと…」


確かに、錫也がいれば百人力。きっと美味しいケーキが完成する。

でも、料理がからっきし駄目なことなんて知ってるくせに、一人でケーキを作ろうとした理由はちゃんとあった。





―ちゃんとしたものを作りたい。





―理由をあまり言いたくない。





ぐるぐると堂々巡り。





「月子?」


おでことおでこがコツンと合わさる。視線が合う。
それから一回触れ合うキスをした。


「教えて?」




ああ、もう。


私は彼の笑顔とお願いに弱いんです。




「だって…錫也の誕生日…」

「え?」

「錫也の誕生日にあげたかったんだもん…」

「―…っ!!」



驚いた顔をしたと思ったら、次の瞬間には満面の笑顔。


分かってるよ、錫也。
貴方は優しいから、きっと。







「その気持ちだけで充分だよ」






ほらね。
私の罪悪感をあっさり和らげて、嬉しくさせる。


「ありがとう、月子。一緒に作ろう?それから一緒に食べよう?お前の泣きそうな顔より、笑った顔が誕生日に見たいんだ」






優しさが愛しくて。



甘さが愛しくて。



貴方が愛しくて。









私は彼の腕に飛び込んだ。









気持ち伝われ!
(錫也)
(ん?)
(…ありがとう)
(…こちらこそ、ありがとう)




Happy Birthday Suzuya!!













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