Starry Sky

□冬雨エスコート
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寒いのに、冷たい雨が降った。それは一日中降っていて、授業中何回げんなりしたか分からない。放課後になった今でもシトシト地面を濡らしている。

昇降口で黒い傘を開いた。街のどこかで適当に買ったやつ。いつ買ったかも覚えてない。今年ではないことは確かだが。
そいつを右手に持って、湿気た地面へ一歩を踏み出そうとした時、「あ」という声がした。


可愛らしい女の声。それは男子だらけのこの学校に唯一響く。


俺の心臓が跳ねた。


「今から帰りですか?」
「ああ。お前もか?」


部活か係か、分かりかねないが生徒会の仕事意外を終わらせて来たのだろうか。また、他の男と一緒にいたのか。
付き合ってもないのに疚しいこの感情。いけない、いけないのに止まらない。


「あ!」
「ん?どうした?」
「傘、教室に置いてきちゃった…」
「おいおい…」


やっぱりどこか抜けてるな。だから放っておけないんだが、そこが可愛い。片眉下げて苦笑する俺は、「バカじゃねえの」と冗談めかしくも言えなかった。
本当、しょうがない奴。


「ほら、入れよ」
「え?」
「教室まで取りに戻んの、面倒臭えじゃん。暗いし送ってってやるよ」
「でも…」
「遠慮すんな。会長命令だ」


「はい…」と弱々しく返事をして、隣に並んでくれたお前。相合い傘が嬉しいなんて、邪な気持ちは内緒だ。
俺は見栄を張って、雨のエスコートを始めた。










◆相合い傘なんて
05.相合い傘なんて

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