「郁って大学ではモテてるんだよね」 彼女が家に遊びに来た。ゲームとかある部屋じゃないから、のんびりお茶をしていると、いきなり言われた。 「どうしてそんなこと訊くの?」 「質問してるの、こっち」 おや、今日の彼女は強情だ。引く気はないらしい。 この子はちょっと頑固なところがあるから、こうなるとこちらが諦めるしかない。 否、言いくるめる方法なんていくらでもあるんだろうけど、僕がなるべく彼女の我儘を聞いてあげたいだけなんだ。 結局、惚れた弱みってやつ。 「たぶんね」 「…曖昧」 「何?君は僕に、はいモテてますって言ってほしいの?」 彼女は勢い良く首を振った。ま、当然だよね。 「本当に多分なんだよね。モテてる、なんて自覚ないし。昔は知っての通り、女友達と一緒にいることが多かったけど、君と付き合ってからは男友達といることが多くなったよ。これでいい?」 「…うん」 「じゃあ、今度はこっちの番だよ。君は何でこんなことを訊いたの?」 「…………」 「無言はなし」 すると彼女は唸り始めた。 これは恥ずかしいから言いたくないって合図。 でも、僕がそれで許すはずもなくて。…ちょっと頬を赤くして可愛いんだけどね。 僕は言わないとキスするぞ、と意味を込めて顔を近付ける。 「〜この前っ!」 「この前?」 残念。 直前で彼女が喋り始めてしまった。 でも、多分可愛いことを言ってくれそうな気がしたから、距離はそのままで話を聞くことにした。 あ、視線反らした。 耐えてるんだなあ、きっと。 可愛くて仕方ないよ。 「この前ね、クラス男子が言ってたの。郁ってどれくらいモテてるんだろうねって」 「は?」 「最初はね、気にしないようにしてたの。でもやっぱり…」 「気になった、と」 「……うん」 これは、ある意味ヤキモチってことだよね。 恥ずかしそうに俯く彼女は、僕の心を動揺させる。 男女の付き合いは慣れてると思ってたけど、恋愛となると、やっぱりお互い初心者だ。 そんな考えを隠すように、彼女の額に口付けを落とした。 「…月子、ヤキモチ妬いてた?」 「…妬いてた、かも…」 「君も曖昧じゃない」 ぽつり、ぽつりと話す君の唇も可愛い。 僕が嬉しいと思う言葉を綴ってくれる。 「本当素直じゃないよね、君は」 ――お仕置きだよ。 僕はそう言って、彼女にキスをした。 02.王子様とお姫様は結ばれました (こんな甘い時間を過ごすのは、僕のお姫様である君だけ) 【王子様とお姫様は結ばれました】 |