これは、日常の、ささやかな戦いなのかもしれない。 「せーんぱい!」 「なあに、梓くん?」 「今度の休み、デートしませんか?」 「え?」 「木ノ瀬!お前はまた…!」 夜久さんにアピールする木ノ瀬くんを叱る宮地くん。 これは部活の休憩中に見られる光景。 こんな風景が当たり前になったのはいつからだっただろう? そして僕は、彼女に想いを寄せている内の一人だから、二人がケンカしてる間に、いわゆる『おいしいとこ取り』をするんだ。 「はは!木ノ瀬くんと宮地くんは相変わらず仲良しだね」 「あ、部長」 「ねえ、夜久さん。今から生徒会室に行かなきゃいけないんだけど、一緒に来てくれないかな?」 「はい、いいですよ!」 夜久さんの元気な返事を聞いて、二人の後輩がこちらを向いた。 気付いたみたいだね。 でも、ちょっと遅かったかな? 彼女と僕は、短いけれど、今からデートすることになったよ。 「というわけだから、宮地くん、しばらく皆のことお願いしてもいいかな?」 「―え?は、はい。分かりました」 「頼むね。じゃ、夜久さん行こうか」 「はい」 弓道場の扉を開けて、彼女を外へ促す。自分も外へ出て扉を閉めると、木ノ瀬くんの声が聞こえてきた。 きっとデートの約束がちゃんと出来なかったことへの文句を宮地くんに言ってるんだろうなあ…、なんて。 「部長?」 「あ、ああ、ごめん。行こうか。今日も相変わらず暑いね。飲み物でも買おうか」 「いいですね!」 「じゃあ、いつも頑張ってる君にはおごっちゃおう」 「えっ!?いいですよ!!自分で払います!!」 とりあえず、今のは僕の勝ち。 けれども、この可愛いお姫様争奪戦は、まだまだ続きそうだ。 03.仕掛けられた戦争 (絶対負けない、負けたくない) 【王子様とお姫様は結ばれました】 |