お題
□好きかも、しれない
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「なぁ、におー。」
部活も終わり、帰り道。
隣を歩くブン太が急に足を止めた。
「におーは俺のどこが好き?」
冬の夜は早い。
夏場はまだ明るかったこの道も、もうとっくに闇に包まれていてブン太の表情がわからない。
「…どうしたんじゃ、急に。」
「いいから答えろよぃ」
微かに震えているブン太の声に、内心焦りを感じた。
「…正直、よくわからん」
ビクリ、とブン太が震えたのが空気でわかった。
「でも、それでも…お前さんじゃなきゃ嫌なんぢゃ」
小さく小さく紡いだ言葉は冬の静寂によく通り、
瞬間、月明かりに照らされたブン太の嬉しそうな顔が目に入った。
(もしかしたらその表情が)
(1番好き、かもしれん。)