お題

□好きかも、しれない
1ページ/1ページ




「なぁ、におー。」

部活も終わり、帰り道。

隣を歩くブン太が急に足を止めた。

「におーは俺のどこが好き?」

冬の夜は早い。

夏場はまだ明るかったこの道も、もうとっくに闇に包まれていてブン太の表情がわからない。

「…どうしたんじゃ、急に。」

「いいから答えろよぃ」

微かに震えているブン太の声に、内心焦りを感じた。

「…正直、よくわからん」

ビクリ、とブン太が震えたのが空気でわかった。

「でも、それでも…お前さんじゃなきゃ嫌なんぢゃ」


小さく小さく紡いだ言葉は冬の静寂によく通り、


瞬間、月明かりに照らされたブン太の嬉しそうな顔が目に入った。


(もしかしたらその表情が)
(1番好き、かもしれん。)



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ