SHINeeの自由帳U
□ただ…きみがいないだけ
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さっきまでの雨はもうあがってアスファルト漂うまちの匂い
ねぇそっちも、もう晴れてるよね 西から回復するって…
朝は苦手なきみだから ねぇ、毎日ちゃんと起きられてるかい?
そんなこと いまだに心配してるよ
広がる空は 自由で 何も変わってないけれど
隣に今はただ…ただきみがいないだけ…
…
・・・
……声をきかせて…
声をきかせて
【ただ…きみがいないだけ】
バスルームで流れる音楽。
君がここでよく1人で聞いていた音楽は、今もこの中に残ったまま。
俺はさっきから風呂の縁に両肘をついたまま何度もこのメロディーを聴いている。
溜まっていた風呂釜の水が、少しずつ減っていって、排水溝に流れていくのを見送って。
すっかり水の無くなった風呂桶を眺めて、
俺はそれでもこの曲から離れられなかった。
(きみがいなくなったことが認められなくて)
君はいつも、ここで一人で風呂に浸かってた。
長湯が好きで、CDプレイヤーを買えとせがまれて購入したのは、去年の秋だった。
最初は俺の曲を聴いてくれるのかと思って楽しみにしていたら、買ったのは"日本"のCDで。
しかもよく聞けば韓国人が歌った歌だという。
一体どういう了見だと揉めたこともあった。
クリスマスはそれで喧嘩になり、俺が買った記念日の指輪を河に捨てやがって、さんざん口論になった。
俺は河にまで飛び込んで、次の日から寝込んだんだ。
正月は互いの実家にも行った。
俺は緊張して喉も通らなかったッていうのに、君はうちの親父とも打ち解けて酒豪っぷりを披露して、姉ちゃんを説得するのに冷や汗をかいた記憶がある。
重なったバレンタインにもらった贈り物をステージの上で付けてたらなぜか怒られて。
君がそれでも、少しずつ心を開いてくれてきているのが嬉しかった。
年上の君の心を理解するには、俺にはまだ難しくて。
君が求める先の答えをいつも出してあげられなくて歯痒かった。
従うばかりの俺をいつも叱って。
君の心は少しずつ俺から離れていった。
苦痛になんてなってないって、何度も言ったのに君は信じてくれなくて。
「そろそろ終わりかもしれない」なんて言ったら、
君の瞳から涙が溢れた――。
(あぁ、どうして俺はまたきみの欲しい答えを言えないんだろう)
本心じゃないのに、君は見抜いてくれなくて。
まるでそれが俺の本心みたいに受け取って、俺の前からいなくなった。
(そんなに何か物足りない関係だっただろうか?)
(俺たちはそんなにギスギスした関係だっただろうか?)
君が俺を愛しているといった言葉は…
俺が君を愛しているといった言葉は…
(そんなに薄っぺらかったんだろうか?)
だけどもう、俺と君の未来は、なくなってしまった――。
「コエヲキカセテ…」
日本語で流れるその歌の意味はわからない。
ただ何度も聞こえるそのフレーズは、
呼べば君が来てくれそうな気がして、
口に出さずにはいられなかった。
「となりにいまはただ……ただ…きみがいないだけ…」
呪文のように何度も唱えたけど、
君が俺の前に現れてくれることはなかった――。
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