SHINeeの自由帳U

□ただ…きみがいないだけ
1ページ/2ページ


さっきまでの雨はもうあがってアスファルト漂うまちの匂い
ねぇそっちも、もう晴れてるよね 西から回復するって…


朝は苦手なきみだから ねぇ、毎日ちゃんと起きられてるかい?
そんなこと いまだに心配してるよ
広がる空は 自由で 何も変わってないけれど
隣に今はただ…ただきみがいないだけ…

・・・
……声をきかせて…



声をきかせて




【ただ…きみがいないだけ】



バスルームで流れる音楽。
君がここでよく1人で聞いていた音楽は、今もこの中に残ったまま。


俺はさっきから風呂の縁に両肘をついたまま何度もこのメロディーを聴いている。


溜まっていた風呂釜の水が、少しずつ減っていって、排水溝に流れていくのを見送って。


すっかり水の無くなった風呂桶を眺めて、


俺はそれでもこの曲から離れられなかった。




(きみがいなくなったことが認められなくて)




君はいつも、ここで一人で風呂に浸かってた。


長湯が好きで、CDプレイヤーを買えとせがまれて購入したのは、去年の秋だった。


最初は俺の曲を聴いてくれるのかと思って楽しみにしていたら、買ったのは"日本"のCDで。


しかもよく聞けば韓国人が歌った歌だという。


一体どういう了見だと揉めたこともあった。


クリスマスはそれで喧嘩になり、俺が買った記念日の指輪を河に捨てやがって、さんざん口論になった。


俺は河にまで飛び込んで、次の日から寝込んだんだ。


正月は互いの実家にも行った。


俺は緊張して喉も通らなかったッていうのに、君はうちの親父とも打ち解けて酒豪っぷりを披露して、姉ちゃんを説得するのに冷や汗をかいた記憶がある。


重なったバレンタインにもらった贈り物をステージの上で付けてたらなぜか怒られて。


君がそれでも、少しずつ心を開いてくれてきているのが嬉しかった。


年上の君の心を理解するには、俺にはまだ難しくて。


君が求める先の答えをいつも出してあげられなくて歯痒かった。


従うばかりの俺をいつも叱って。


君の心は少しずつ俺から離れていった。


苦痛になんてなってないって、何度も言ったのに君は信じてくれなくて。


「そろそろ終わりかもしれない」なんて言ったら、

君の瞳から涙が溢れた――。




(あぁ、どうして俺はまたきみの欲しい答えを言えないんだろう)




本心じゃないのに、君は見抜いてくれなくて。



まるでそれが俺の本心みたいに受け取って、俺の前からいなくなった。



(そんなに何か物足りない関係だっただろうか?)


(俺たちはそんなにギスギスした関係だっただろうか?)




君が俺を愛しているといった言葉は…



俺が君を愛しているといった言葉は…







(そんなに薄っぺらかったんだろうか?)






だけどもう、俺と君の未来は、なくなってしまった――。






「コエヲキカセテ…」




日本語で流れるその歌の意味はわからない。


ただ何度も聞こえるそのフレーズは、


呼べば君が来てくれそうな気がして、


口に出さずにはいられなかった。



「となりにいまはただ……ただ…きみがいないだけ…」



呪文のように何度も唱えたけど、



君が俺の前に現れてくれることはなかった――。















.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ