SHINeeの自由帳\

□DEEPNESS
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現生徒会長である目の前の男は、僕の中学時代からの先輩にあたる。


誰もが志望するだろうと思われていた某私立高校に入学するのを諦めたのは、父が病に倒れたからだ。

身近な公立高校の方が通いやすいし、金銭的にもよかった。

理由はただそれだけ。

ただ・・、

上を目指すことだけが生きがいでなくなってしまった瞬間に、目標を見失ったのもたしかだ。


先輩はそんな僕に、この高校に来るように勧めてくれた。

のどかな田舎に建つその高校は、都会の真ん中に建つグラウンドの小さな私立高校とは違う。野球部など、運動部にも有名な高校で、成績は中の中。平凡な高校だった。

最初の1年はまともに過ごしたが、授業はあまり面白くなかった。全員にわかるように教える先生のカリキュラムは、僕にとっては退屈そのもので。

そのうちにだんだんとさぼるようになって・・。

2年生のいまではすっかり屋上にいるのが日課になってしまっていた。

先輩はそんな僕に声をかけてくれて。

いまではずるずると生徒会室に入り浸っている。





"ピンポンパンポーン"

『生徒の呼び出しをしまーす・・2年生のイ・ジンギさん・・至急職員室まで・・・・』




会長「呼び出されてるぞ?また」



ジンギ「いつものことですよ。単位か補習かな‥」


会長「まったく・・。お前にアレのありかを教えたのは間違いだったよ」


ジンギ「屋上のこと?別に僕だけが使ってるわけじゃないですよ」


会長「他に誰が使ってんだよ」


ジンギ「時々居ますよ」


会長「煙草か?」


ジンギ「いや、餌?」


会長「は?」




頓狂な声を上げる会長の背景にあった窓の景色が、夕方の雲の色になった。

日が落ちて、下の方に残るオレンジ色の上に、群青色の空が覆いかぶさってくる。もうすぐ夜が来る時間だ。


ジンギ「僕、職員室に行ってきますよ」


会長「おう」



書類に目を通していた会長が、ひらりと片手をあげたのをみて、僕は生徒会室をあとにした。


会長はああ見えて何でも一人でこなす人だ。ワンマンでやり過ぎるところがあって、時々総会で叩かれたりもしていたけど。あの人のすごいところは、それでも最後までやり遂げるところだ。

それは、今の僕にはないもの。

あの人はまるで僕とは真逆なんだ。





ミノ「じゃあ僕、鍵職員室に返してきますね」




真ん中の校舎から職員室のある新校舎までやってくると、丁度放送委員の人たちが施錠して帰るところだった。

いつも僕を呼び出してくれる人が誰なのか、顔を見ようと思ったけど、


先生「こら。ジンギ」


その前に担任の先生に捕まってしまった。



ジンギ「なんでしょうか」


先生「授業単位が足りてない分はどうするんだ。補習でるのか?」


ジンギ「次のテストで1位とります。それでいいでしょう?」


先生「2位だったら単位やらんぞ?」


ジンギ「いいですよ」



いけしゃあしゃあと言ってのけると、先生は渋ぅい顔をしていたけど、それでも了承せざる得ない顔をして僕の前からいなくなった。



この学校で楽しいのは、屋上から眺めるのどかな景色だけ・・・・



そう、思っていた。





生徒会室に戻れば、会長が頬杖をついたままうたた寝をしていた。


僕は窓のカーテンをしめながら、頭を揺らす先輩に声をかける。



ジンギ「先輩、起きてください。もう日が暮れたから帰りますよ」


会長「お、おう・・もうそんな時間か・・」


ジンギ「早く支度して下さい。僕家でケーキ食べるんですから」


会長「なんだ。今日は誕生日か?」


ジンギ「そうですよ。僕の」



そういうと、会長は少しびっくりしたように僕の目を見て。

それから「ほんとか?」と目を丸くしたまま言った後、白い歯を見せてニカッ、と笑って、「おめでとう」と、言った。


会長「プレゼントは何がいい?会長になれる券でもやろうか?」


ジンギ「いりませんよ。それ先輩がさせたいだけでしょ?」


会長「お前が会長やってくんないかな〜」


ジンギ「いやですよ。そんな面倒くさい仕事。それに、来年は先輩いないじゃないですか」


会長「だからだよ。2年やってきたけど、さすがにもう引退だ。俺のあとを、お前になら任せられる」


ジンギ「い、や、ですよ」



きっぱり断ったのに、先輩はまだへらりと笑っている。





会長「お前に見せたかった景色は、屋上から眺める景色なんかじゃないよ」


ジンギ「壇上から眺める全校生徒の顔とか言わないですよね?」


会長「・・・・」



ジンギ「言うんだ・・・」



会長「Σば、バカッお前に見せたい景色は、お前が会長にならなくちゃ見れないんだよ!」


ジンギ「口で説明してくれればいいですよ」


会長「で、き、ないの!」




怒ったように言いながらも、会長の顔が苦笑いしてる。




こんな時は・・・本当に困ってる時なんだ。



ジンギ「会長・・・・、僕は本当に・・誰かの役に立てるような立派な人間じゃないですよ?」



会長「お前は十分に俺の役に立ってるよ。大丈夫」



何が大丈夫なんだか。

先輩は施錠した生徒会室の鍵を僕に渡した。




ジンギ「なんですか?返して来いって?」


会長「持ってろよ。お前の鍵だ」


ジンギ「・・・・。押し付けはプレゼントには入らないんですよ、先輩?」


会長「宝物になるぜ」



ジンギ「・・・・」





先輩は人の話を聞かない。今に始まった話ではないが・・。


僕は仕方なくそれを、生徒手帳の内側のポケットにしまった。




会長「大事なものを生徒手帳にしまう癖、まだあったんだな」



先輩が見透かしたように微笑むのを見て、僕はそれを制服のポケットにつっこみながら恥ずかしくなった。


この人に勝てるものなんてなにひとつない。



そう思ってる。


だからなのかな・・。



ちらりと、僕の中の何かに火がついた。




ジンギ「会長に・・・・なっても、いいですよ。あなたを越えられるのなら」


会長「おもしろい。やってみな」




先輩はそれさえもわかっていたような顔で笑った。そして、僕と先輩は拳を互いにつき合わせて約束した。














今年は誕生日にへんなものをもらっていまった。














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