夢物語
□闇に包まれた僕は君に触れることすらできない
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サラサラとそよ風に靡く君の真珠色の髪が好きで、見つめていた。
そして君は僕の視線に気付いたのか、振り返る。
僕は何も言わずに君の左隣に行き、手のひらを重ね、指を絡ませる。
君は微笑んで俯きながら歩く。
薔薇色の頬は一層紅く染まり、潤んだ蜜色の瞳は僕が視野に入らない空間を見つめている。
「ねぇ、シエル。ずっとこうして二人でいられたらいいね」
「そうだな」
無理だよ。ずっと、なんて。永遠に一緒にいることはできないんだよ。
僕は地獄、君は天国に行くんだから。
そういえば前、僕がこの話をした時、君は言ったよね?
「クロスも、アンチクライストも元は同じものだよ。天使のルシファルと堕天使のミカエルが双子のように、私たちはひとつの場所へと行けるかもしれないわ」
そうだね。
君は白く、僕は黒い。
一度黒く染まったものは元には戻せないけど、白いものを黒く染めることは容易い。
だけど、僕はそんなことをしたくない。
君が着ているセントクレアワンピースの裾が揺れて、強い風で髪と、大きなリボンが付いてるヘッドドレスも靡く。
あぁ。
君を、此所でも天国でも地獄でもない場所に閉じ込めておきたい。ずっと、永遠に、僕だけのものでいてほしい。
光の輪と白い羽があったなら、今すぐにもぎ取りたい。
僕は貪欲だ。