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□鈴蘭 天地寿という男。
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それから鳩尾【みぞおち】を思いっきり蹴り上げて、
抵抗されない内に床に叩きつけてから、
全力疾走でその場から離れた。
「・・・あの野郎、首噛みやがった」
叩きつけられた格好のまま、俺は天井を見上げていた。
首元の、アイツに噛まれた歯形から血が滲んできたのに気付いて、
傷口を手で押さえる。
(天海、芽生・・)
アイツはいきなり俺に顔を近づけてきて、ふっと小さく薄く笑った。
その顔が、何故かものすごく綺麗に見えて、
俺は一瞬、動きを止めた。
だからこんな無様な姿で寝てる訳だが、
本気で負けたとは思っちゃいねぇ。
あいつは喧嘩の仕方は知っているが、腕力も、脚力もそれ程持っていない。
長い時間やり合えば、すぐボロが出るだろう。
(・・・・・・・)
天海芽生・・・
調べてみるか
―俺は立ち上がってから
傷口を押さえていた手の平についた血を、一度だけ小さく舐めた。
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