MENU

□番外編3
1ページ/3ページ

「このケーキ美味そうだなー」
「?」
「天海先生は美味そうな絵書くんすねー」
「あぁ 12月号の見本本読んでたんですか?」




One's Word and Cake



福田が泊まりで新妻先生の仕事場でアシスタントをした帰り
福田真太はマンションの入口でバッタリ出会った少女漫画家
天海メイ先生に会い
お茶に誘われた為に出ようとしていたマンションから足を出さず
来た道を戻り
そのまま天海の家に上がり込んだ

それから天海がお茶の準備をする間
福田は少々天海の仕事場を見せて貰っていると目についた集英社の文字
紙袋には発売前の月刊少女漫画りぼんが入っており
何本か読み切りを雑誌に載せた事のある福田は直ぐにそれが見本本だとわかり手にとった


「福田さんも読んでくれてるんですか?」
「あぁ」
「まさか 買ってたり・・」
「んなわけないだろ!新妻くんの所で読んでるんだよ」


キッチンから顔を覗かせ天海が福田の手に持つりぼんに少し笑いそうになりながら
メルヘンなどは苦手な福田が毎月
知り合いの漫画だという理由でもしっかり読んでくれている事に頬が緩んだ
読んでくれている事と絵を褒めてくれた事に天海はありがとうございますと
キッチンから礼を言うと
福田は照れたのか
素っ気ない返事を返したが
それでも天海は嬉しかった


「福田さん意外と甘いもの食べますよね」
「たまにな」
「でもそのケーキはミルクチョコレートに砂糖のマジパン沢山乗ってて凄く甘いですよ?」
「・・・あまり甘くない方が好きだ」


盆に湯気の上がるカップと少しの茶菓子を乗せ
天海がまだりぼんを見ている福田の所にやってくると
立ち読みせずにソファーに座って読む事を勧め
たまにヘルプで仕事を頼んだときには漫画道具だらけになる
来客用のソファーとテーブルのある部屋で2人
向かい合って腰をおろした

福田は天海の漫画だけ読めば気がすんだのか
直ぐにお茶を飲みながら何気ない会話を天海と交わし
漫画家同士
自身のマンガ論や最近のジャンプや集英社の話で盛り上がった


「そうだ!」
「ん?」
「福田さんイブかクリスマスは暇ですか?」
「バイト」
「あ そうですよね・・・一番忙しい時季ですから」
「・・・・・・早朝だからクリスマスの夕方なら空いてる」
「え 本当ですか?!」
「ああ」
「じゃあ一緒にクリスマスパーティーしません?」


お茶をする前
福田が読んでいた天海の漫画
毎回ヒロインがお菓子作りをする漫画が12月号では定番だが
クリスマスにクリスマスケーキを作る話で
12月号の表紙も天海の漫画のヒロインがクリスマスデコレーションに囲まれている
そんなテーブルの端に置かれた雑誌を横目に少し話題に上がったからか
突然天海がニコニコと福田にクリスマスの誘いをした

天海の誘いに別に付き合っているわけでもないのにクリスマス
恋人達のイベントの日に自分が誘われた事に福田は驚いたが
そういったイベント時は人手が不足するコンビニのバイト
飲食店などもそうだが
独り身の若者がその日バイトに明け暮れ稼ぐのは当たり前
断るように仕事があると福田が話すと
彼の目の前で明らかに落ち込む天海に福田は申し訳無くなった

だから
ついつい落ち込む1つ下の少女に夕方なら大丈夫
丸一日
天海の為に空けることは出来ないし天海も連載漫画家
大きな行事や祝日があろうと
締切りまでに漫画を描かねば休みはこない
夕方からならそこまで仕事に差し支えがないだろうと思い提案すると
さっきまでの落ち込みようは天海の演技だったのかもしれないと思う程
一気に機嫌を良くしてケーキ作りますねっなんて福田に言った
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ