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□鈴蘭 可愛い人。
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「このあいさつを誇れ。」
兄貴に、そう言われたから。
04.可愛い人。
ちゅ、
店内に、消えそうなくらいに短い音が小さく響いた。
その場に居た芽生以外の男達は、唖然として立ち尽くすばかりで、自分の表情に責任すら持たない。
好誠は、訳が分からない、という風に、
既に芽生の唇が離された頬を手で押さえていた。
かなり、動揺していた。
(なんだ?)(何が起こった?)
徐々に、顔に熱が集まってくるのがよく分かる。
だが、そんな好誠を尻目に、柳・鉄生・将五の順にまた、
芽生は初対面にしては衝撃的すぎる挨拶をし始めた。
そう、相手を抱き締めて、頬に顔を寄せる、あの仕草。
その時の芽生の顔は、なんとも思ってない、これは形式的なモノ、そう物語っているようで、
好誠は、
(…こいつ、帰国子女かなんかか?)
と思ったりしてみた。