short

□吹き飛ばして
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"抱いて"

彼女からそんな言葉が出てくるとは思わなかったから、読んでいた本は床にバサリと落ちた。
彼女の表情は見えない。
彼女はただ、俺が落とした本を見つめていた。
朝会ったときから様子が変だと思っていたが。



「・・・どうした」



そう聞いても、彼女はただ黙ってるだけだった。

ガタッ、と椅子から降りて本を見つめてる彼女の頬にそっとふれる。
それでも反応の無い彼女の顔を覗いてみれば、泣きそうな顔だった。

本当にどうしたんだ。


ぎゅっ、と抱きしめて耳元でもう一度、"どうした"と、呟いた。


彼女は少したってから、俺の背中に腕を回して、ボソリと呟く。
近くに居なきゃ、絶対に聞こえない彼女の訴え。



(不安なの)



俺は目を見開いてから、彼女を強く抱き締めて、泣きそうな顔をした彼女にキスをしながら、ゆっくり床に倒した。



「愛してる」



だから、心配なんかするな。




吹き飛ばして

09.08.06


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