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□きみだけがそこにいた
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赤と黒を混ぜたような色の液体が、地面を濡らす。
それは人だったモノから流れ出て、とても醜く見えた。
(汚ねぇ・・・)
それを見ないように、空を見上げる。
真っ暗な中に星が輝いてて、夜を照らす。
ツン、と鼻につく血の臭い。
早くこの場を去ろうと反対方向に足を進める。
ありえないが、死体と化したモノから視線を感じた。
見るな、テメェは俺に壊されたんだ。壊されたんだ。
チッ、と小さく舌打ちをする。
気に入らないものは全て壊してきた。
邪魔になるものは全て殺してきた。
それに比例するように、懸賞金も上がる。
後悔なんざしたことねぇ。
狂っちまいそうなくらいの数の人を殺した。
それでも狂わなかったのは、いつも血溜まりの道の先に、血に濡れた俺の隣に、いつも当たり前のようにお前がいた。お前だけが居た。だから、だ。
「キッド、帰ろう」
ああ。その存在だけが、俺を照らす。
月でも、星でも無く、お前ただひとりが。
きみだけがそこにいた
09.10.15