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□焼死
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サッチとあいつが死んだ。
仲間たちの顔は歪んで、そのふたつの死体を見ていた。ふたつとも、4番隊の死体だ。あいつは、巻き込まれたのだろう。
そのあいつが、生気を失った目でおれを見ている。名も知らない、あいつ。こんな大人数の仲間、名前を覚えてない奴らもいる。あいつもそのひとりだ。でも、一際目につく存在だった。
見た目は特になんの変わりもない普通の女なのだが、何故か綺麗に見えた。
そしてそんなあいつが死んだ。なんて綺麗なんだろうか。まるで人形のようなそれに、おれはごくりと唾をのんだ。
サッチの上に重なって倒れているあいつは、どう殺されたのだろうか。どう殺したら、あんなに綺麗な姿が残るのだろう。
(・・・いや、きっと)
どう殺しても、あいつは綺麗なんだ。ずっと、砂になっても骨になってもバラバラになっても、綺麗なんだ。
そんなあいつと死ねたサッチが、羨ましいと感じた。
そんなあいつを殺したティーチを、羨ましいと感じた。
そんなあいつを見ている仲間に、疎(うと)ましさを感じた。
(醜い嫉妬、だ)
焼死
(そんな嫉妬と一緒に、大きな愛情も注いで、おれはあいつを燃やそう)
10.02.27
名も知らない、あいつを。