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□生まれ変わっても愛して
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死んだら生まれ変わる。
そう信じていたから、私は死に恐怖なんてなかった。

今の人生に別に執着なんかしてないし、満足もしてない。死んで生まれ変わって、また新しい人生を過ごせるなら、どんな苦しい死に方をしてもいいと思った。


こんな、つまらない世界から逃れられるなら。


今の私は、大嫌い。
前の私も、その前も。
いくら死んで生まれ変わっても、私は人生に、世界に、私自身に、執着なんかしなかった。満足なんてしなかった。


次生まれたら、私に前の私の記憶なんてない。
だから、また繰り返す。嫌いな自分のまま人生を生きる。そう、エンドレス。永遠に終わらない輪廻転生。

生まれ変わっても、私は私のまま。一生前へとは進まないの。

前世の記憶なんてないから、もしかしたら前世の私は人生に満足してたかもしれない。でもね、絶対そんなことは無いわ。根拠なんてないけど言い切れる。




ローにしては珍しい本を読んでいた。輪廻転生のお話。
だから私は、ずっと心の中で思っていたことを口にした。

私が話し終わると、ローは本を自分の座っていた椅子に置き、向かいのベッドに座っている私の横に、腰をおいた。ただ何も喋らず、私の頭を優しく撫でる。その行為に涙が出そうだった。



「そう考えてたのに、ローと出会ってから変わった」



死んで、ローと離ればなれになるのが怖いよ。

涙を見せたくなくて、ぎゅ、とローに抱きついた。ローも力強く、ぎゅ、と抱きしめ返してくれる。ああ、幸せだ。



「死なないとは言えねェ。人間いつ死ぬか分からないし、寿命が終われば死ぬ」



だが、お互い死んで生まれ変わっても、俺はまたお前を探してお前を愛する。



ああ、ローが探してくれるなら次からの私は人生をいっぱい頑張って生きようとするだろう。

ありがとう、小さく呟いた私にローはキスを落とした。




生まれ変わっても愛して



(今の私のように、幸せになりますようにと願って)

09.10.18


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