小説(短編)
□帝王と花嫁
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「はじめまして、私鈴木綾乃と言います。――ご存知ですよね?」
その名前を聞いた瞬間、瀬那は時間が止まったかの様な感覚に陥った。
聞いた事は、勿論ある。
だって…だって――!!!
「昔、猛と付き合ってました。あなたに横から、穫られたモノです」
「そんな!」
奪った覚えなんかない!
そう反論しようとした、瀬那だったが…。
「猛を返して下さい!私には、彼しか居ないんです」
自分を睨み付けながら、涙を流す女性の言葉を瀬那は俯きながら、聞いていた。
「大体、貴女みたいな女の癖にアメフトをする様な野蛮な女に誑かされて…。猛が可哀想だわ!」
やめて…。
「そんな子供みたいな体を抱かせたり、良く出来るわよね」
―――――――!!
「やめてよっ!」
瀬那は、聞きたくないとばかりに、その場にうずくまり耳を塞いでハラハラと涙を零した。