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   愛だとか恋だとか、そんな

   色めいた感情じゃなかった

   もっと黒くて深くて冷たい

   青く燃える炎みたいな想い


   口にすればなにかが壊れて

   しまいそうなこの気持ちを

   彼女に伝えられる訳もなく

   ただただ俺は笑っていた。

   俺が笑えば彼女も笑うから



   「ジロー」



   ほら今日も君は俺の名前を

   呼ぶ。その度に俺の中には

   ぐちゃぐちゃに掻き乱され

   た気持ちが溢れ出すんだ。

   君は知らないでしょ?





   彼女のとこへと駆け寄って

   抱き着くと彼女は嬉しそう

   に笑って俺の髪を撫でた。

   この瞬間、俺はとても安心

   した。


   冷たく暗い箱の中でやっと

   見つけた光のようでほっと

   した反面、少しだけ怖さも

   あったけれど。


   彼女を求めてはいけないよ

   うなそんな想いずっと気付

   かないふりをしていたんだ



   「ジロー?」

   「なーに?」

   「どうしたの?」

   「…え?」



   泣いてる、そう言って俺の

   腕から抜け出した彼女は悲

   しそうな顔をして俺の頬に

   そっと触れた。


   目から勝手に溢れ出した雫

   は彼女の体温を冷やすよう

   な冷たさで、こんな汚れた

   人間は涙さえも冷たいのか

   と自分自身を笑ってやりた

   くなった。


   止まらない涙は彼女の指を

   伝いぽたりと床に消える。

   この涙が彼女を縛りつけれ

   ば良いのに。二度と俺から

   離れられないように、

   俺の冷え切った涙が彼女を

   汚してしまえばいい。そん

   な感情が溢れてとまらない


   ぼやけた視界に映るのは彼

   女の悲しそうな顔、俺の涙

   を拭うあたたかい手



   「…ねー」

   「、なに?」

   「好きだよ」



   臆病な俺は今日も君への想

   いを押さえ込みます。あた

   たかい手が俺を咎めるよう

   で痛い、でもいつか溢れ出

   して言ってしまいそうです



   小さく笑いが零れた

   俺に抱き着いたまま離れな

   い彼女には見えてないだろ

   うけど



   だから今はもう少しだけこ

   の想いを隠させてよ


              end





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