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    あーあったかい。こうやってもうふにくる

    まって、じわりじわりと体温が移っていく

    のが堪らなく心地好くて好き。おまけに隣

    には大好きな彼氏様が居るのだから、これ

    が幸せでない訳ないのだ。事を致した後特

    有の気怠い体はとろりとろりと眠気に誘わ

    れて、口からこぼれおちる言葉はどれもこ

    れもふわふわと浮かんでは消えていくから

    さぞかし真ちゃんも困ってることだろう。





    「んーしあわせー」





    それでも言いたい言葉は山ほどあるから遠

    慮しない。言っても言っても足りない言葉

    を全部まとめて形にして、真ちゃんに渡せ

    たらいいのに。それは大きな大きなプレゼ

    ントになるだろうけど、その日のラッキー

    アイテムと一緒に傍に置いてくれたら嬉し

    いなあ。





    「…何を言ってるのだよ」

    「あれ、声にでてた?」

    「しっかりな。…間抜け面をしてるかと思

    えば」

    「ほんとに思ってることなのになあ」





    すき 大好き あったかい 安心する 真

    ちゃんのにおいがする ずっと一緒にいれ

    たらいいなあ しあわせ ちゃんと伝わっ

    てるかな。全部全部ほんとのことで、何回

    でも言いたいんだよ。





    「真ちゃんの隣にいれる私は、すごーくし

    あわせだよ」

    「…言われなくてもわかってるのだよ」

    「そっか、ならよかった」





    ふあーあ。あくびがひとつ零れる。安心し

    ていよいよ眠くなってきた。まぶたが今に

    もくっついてしまいそう。とくりとくりと

    聞こえる真ちゃんの心臓の音があったかい

    。生きてる証だから、あったかい。あーも

    う。好きが溢れてとまらないなあ、どうし

    よう。





    「…寝るのか」

    「んー、」

    「どっちなのだよ」

    「…んんー」

    「…はあ」





    あれ?ふわりと優しい香りに包まれた。真

    ちゃんのにおいだ。ぎゅうぎゅうあったか

    い。必死になって少しだけ目を開けてみる

    と目の前には真ちゃんの顔があって、腕ま

    くらなんてものをされていた。大変だ。き

    っと腕が痺れちゃうからはやく退かなきゃ

    。真ちゃんの大事な腕はまもらないと。





    「…夢なのだよ。いいからそのまま寝ろ」





    ゆめ、か。そっか。夢なのかな。夢なら少

    しだけ、甘えてもいいかな。許してくれる

    かな。目が覚めても目の前に真ちゃんがい

    て、抱きしめてくれてたら、嬉しいなあ。



    ねえ、だいすきだよ。真ちゃん。










    〇 。 ゜ 、










    「…まったく。不思議な奴なのだよ」





    同じような言葉を何度も繰り返す癖に、こ

    こぞという時に中々甘えようとしない。腕

    枕くらい苦痛でもなんでもないというのに

    。別にその事が不満だとは思いもしないが

    甘やかしてやらないこともないのだから、

    少しくらい強欲になれば良いものを。そん

    な考えを巡らせながら、ちらりと視線を寄

    せれば、ふふーとなんとも締まりのない顔

    で笑うものだから、まったくどうしようも

    なくなる。










    「す、きー」

    「…俺もなのだよ」








    願わくば、

    彼女のみる夢が今日も幸せであるように





    1011 end

    大さじ一杯の砂糖を煮詰める夜




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