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 結婚ってね諦めるって

 ことなんだってさ。こ

 の前降りた島の酒場で

 仲良くなったおじさん

 が言ってた。私は好き

 な人とずっと一緒に居

 られる権利だったりと

 か、その人の為に生き

 ても良いっていう証な

 んだと思ってたから、

 なんというか少しだけ

 ショックだったんだ。




 それも少し違ぇと思う

 けどな。それはとても

 穏やかな声だった。顔

 を見た訳ではないけど

 きっと目を細めて笑っ

 ていたことだろう。思

 い浮かべたらなんだか

 くすぐったくなってあ

 たたかな胸に顔をうず

 めた。幸せなのにたま

 にどうしようもなく不

 安になる。私は彼を、

 エースを好きで居てい

 いのだろうか。永遠な

 んてないから、いつか

 終わりがくるだろう。

 それでも私は愛するこ

 とをやめないだろうし

 エースが笑うならなん

 だってする。それくら

 いに好き。大好き。ま

 るでそれは狂気だ。エ

 ースに狂ってる。




 おれは大歓迎だけど。




 え?口から出かけた間

 抜けな声をなんとか噛

 み殺してエースを見る

 。想像通りの穏やかな

 顔にどきりと胸が跳ね

 た。




 ただ、おれは結婚ての

 は証だの権利だのそん

 な難しいもんじゃなく

 て一緒に居てぇとか言

 葉なんかじゃ伝えられ

 ないくらいに好きにな

 った時に自然と辿り着

 く最上級の愛情なんか

 じゃねぇか、と思う。

 けど、な。わかんねぇ

 けど。ははっなんて言

 って笑うから目の奥が

 ツンとして胸がぎゅう

 ぎゅう苦しくなった。




 おれは、諦めるだなん

 て思わねぇな。だって

 おまえと結婚できるん

 なら、最高に幸せだ。

 …そうだろ?




 今度こそ涙が出た。ど

 うしてそんなに優しい

 の。好きじゃ足りない

 よ。愛しくて幸せで、

 もうなんだか苦しいの




 「、エース」

 「ちょっと待て」




 一度しか言わねぇから

 な、よく聞けよ。なん

 て言ってエースは咳ば

 らいをひとつした。




 「おれと、結婚して下

  さい」




 みょうにかしこまった

 言い方がなんだかとて

 もエースらしくて、あ

 あ夢じゃないんだなあ

 なんて頭の片隅で思っ

 た。じわじわと溢れる

 のは幸せと愛しさ。そ

 れからどうやら涙は幸

 せすぎると止まらない

 らしい。




 はい、と少し震えた声

 はそれでもはっきりと

 エースに届いたのだろ

 う。彼は笑った。愛し

 いエースの笑顔は私の

 生きる意味なのだと大

 袈裟ではなく確かに思

 った。






 0125 Ace.



 





         end




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