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  ポートガス・D・エース

  目の前で眠る彼の名前を知らない

  人はこの海でそう多くはないだろ

  う。白ひげ海賊団2番隊の隊長で

  あり食い逃げの常習犯でもある。

  そんな彼自身もこの名前を誇り高

  く掲げているし、私もとても好き

  だ。


  彼は名乗る時、必ずと言って良い

  程にフルネームを名乗る。胸を張

  って堂々と噛み締めるように。私

  はその声を聞くのがとても好きで

  彼の背中を見ながらそっと笑う。

  いつだってその名を聞くのはとて

  も嬉しい。


  エースの笑顔は素敵だ。太陽だっ

  て敵わないくらいにきらきらと輝

  き眩しく笑う。なんの曇りもなく

  真っ直ぐに、笑う。そんな彼を見

  ると私はどうしようもなく幸せに

  なってもどかしくなる。触れたく

  て仕方なく、なる。


  こないだ彼の弟の手配書を見た。

  3億ベリーという大きな金額より

  も、大きく書かれた名前よりも勢

  いよく目に飛び込んできたのは、

  笑顔だった。眩しすぎるくらいに

  輝いている笑顔。笑った顔がエー

  スにそっくりね、なんてエースに

  伝えればそりゃあもう嬉しそうに

  そうか?なんて笑った。弟のこと

  を話すエースはいつだって嬉しそ

  うで、そんな風に想われる弟くん

  が少しだけ羨ましい。でも、遠く

  離れた場所で尚笑顔を与えている

  弟くんに心から感謝する。エース

  の笑顔が見れるのならなんだって

  いい。この上ない幸せだ。


  遠くで光る月に照らされて眠るエ

  ースはなんだかとても綺麗で消え

  てしまいそう。いやだいやだと急

  いで抱き着きそっと目を閉じる。

  とくんとくんと鳴る心臓が心地良

  い。生きてる、エースは生きてい

  る。じわり、瞳が熱を持つ。


  あと何時間かすれば空が白く少し

  ずつ明るくなりやがて朝がやって

  来る。どうか、これからもずっと

  世界が彼の笑っていられる場所で

  ありますように。神様、私のたっ

  たひとつの願いをどうか叶えてほ

  しい。そっと彼にくちづけた先は

  唇から僅かにずれた場所。酷く曖

  昧な私にはこれが精一杯。

  伝わらなくて良い。

  一つ我が儘を言うのであれば、愛

  しい君よ、いつまでも幸せであれ


  0208 Ace

  

            end






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