テニプリ×東京ミュウミュウ

□A一人目の仲間
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黒川千代子、14歳。

氷帝学園中等部2年在籍。
好きなものはトマトジュース、肉類。
嫌いなものは日光、十字架、ニンニク、銀。

何処にでもいる平凡な女子中学生……


……ではなかった。

いざキメラアニマが出現したら、町の平和を守るために戦う正義の味方。
しかしその実態は普通の女子中学生だ。
ずっと戦っているわけではないし、普段は女子中学生として普通に生活している。
だから平日にはきちんと学校へ行かなければならないわけで。
でも、千代子は布団から出られずにいた。


『ん……』


時計はもうすぐ7時を指そうとしている。
あと数秒のところで7時になるという時に、千代子の寝ているベッドの枕元に置かれている携帯が鳴った。
大音量で鳴るソレに、千代子は眠ったまま眉を顰める。
しかし、いつまでたっても鳴り止まないソレに千代子は諦めたように手を伸ばした。
目を瞑ったまま携帯を探し当てると、慣れた動作で通話ボタンを押す。
そして絞り出すように声を発した。




『……もひもひ』

“ったく、出るのが遅いんだよ。ほら、とっとと起きな”

『後5分……』

“そう言ってずっと起きねえだろ。取りあえず目を開けてみな”

『ヤダ、眩しい』

“安心しろ。お前の部屋のカーテンは100パーセント日光遮断の特殊生地で作られた物に取りかえておいた。だから目を開けても部屋の中は真っ暗だろうぜ”



その言葉に千代子は恐る恐る目を開けてみた。
すると確かに部屋は真っ暗闇だった。
まるでまだ夜のようだと錯覚する程。
時計さえなければ夜と言われたら信じてしまうだろう。


『本当だ、すごーい』


千代子は暫く感心していたが、そこでふと聞き流してしまった言葉に疑問を覚えた。


『……って、何時の間に取りかえたんですか!?私知りませんでしたけど!?』

「仕方ねえだろ、お前居なかったし。俺もその後すぐに用事があったしな。安心しろ、俺は部屋には入ってねえ。千代子の部屋に取りつけたのはメイドにやらせた」

『あ、有難うございます。……そういえば今部活の朝練中じゃないんですか?』

「ああ、ちょうど今終わった所だ。時計見てみろよ」

『わ、もうこんな時間!』



気づいたら時計は7時半を指していた。



「もう電話切るぞ。早く学校に行く準備しろよ」

『あ、待ってください!』



通話を切ろうとした相手に慌てて制止の声をかける。
相手からは怪訝そうな声が返って来たものの、千代子は忘れていた挨拶を口にする。


『おはようございます、跡部さん!』

「……おはよう。遅刻するんじゃねえぞ、千代子」

『はーい』



千代子は元気よく返事をすると通話ボタンを切る。
跡部からのモーニングコール。
恒例となりつつあるこの行為は、千代子が大阪から東京に引っ越してきてからというものずっと続いていた。


ここへ来てから早一年。

毎朝欠かさず電話をかけてきてくれる跡部には千代子も頭が上がらない。
くだらないやり取りだけど、実はいつも密かな楽しみにしていた。

モーニングコールを受け取れるという事は、自分が生きてるんだという証。
戦いに身を置く状況で、こうやって無事いつも通りの朝を迎えられる事が何より嬉しい。
あの声を聞くたび、くだらないやり取りをするたび、ああ、今日も無事一日が始まるんだなって実感できる。
跡部がそれを分かっていて電話をくれている事も千代子は知っていた。
何だかんだ彼はいつも千代子の心配をしてくれていた。


『よし!』



一度パン、と顔を両手で叩いて意識をはっきりさせる。
正直なだ眠いけどそうも言ってられない。
自分は戦士であると同時に学生なのだ。
跡部にも念を押されてしまったし、遅刻しないように準備をしなくては。
テキパキと朝の準備をすまして玄関を出る。

そして誰もいない家に向かって元気よく叫んだ。



『行ってきまーす!』



千代子はチェックのスカートを揺らして意気揚々と外へ出る。

今日も一日が始まる。





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