テニプリ×東京ミュウミュウ
□Fお見舞いに行こう
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千代子は扉の前で一度止まって大きく深呼吸をする。
そうやって少し緊張を解したところで扉をノックしようとした。
しかし、ちょうどノックする寸前に勝手にドアノブが回った。
そして中から出てきたのは一人の青年だ。あまりのタイミングの良さに千代子は思いっきり後ずさった。
そんな千代子を初めはポカンと眺めていた少年だったが、やがてプと吹き出した。
「いらっしゃい、よく来てくれたね。あ、中に入って」
『ど、どうもです。失礼します』
中に通され、千代子は失礼だと思いつつも部屋を物珍しげに見渡した。
その様子に気づいた幸村は小さく笑った。
「病室は初めて?」
『はい。あ、これお見舞いです』
千代子は手に持っていた花と、白い小さな箱を差し出す。
二つを受け取った幸村は申し訳なさそうに言う。
「気を使わせちゃったみたいだね。……この花、向日葵のアレンジフラワーか、可愛らしいね」
『いえ、そんな……。…私お花の事全然分かんなかったので花屋に言ってかろうじて知ってる花だったので』
「それが向日葵ってところかな」
『はい、お恥ずかしながら』
「嬉しいよ」
『良かったです!』
千代子は内心ホッとする。
お見舞いなんて生まれて初めてなものでかなり緊張していた。
でも嬉しそうにしている幸村を見て、やっぱり今日は来て良かったと実感する。
「こっちの白い箱は?」
『あ、そっちはケーキです』
「開けてみてもいいかな?」
『もちろんです』
幸村は花を空っぽだった花瓶に水をいれててから花を生けて、箱をそっと開けた。
「わあ、美味しそう。ガトーショコラかな?」
『はい!私が働いているバイト先でも好評だし、何よりこれが私一番のお気に入りなんです。ぜひ幸村さんにも食べていただきたくて……あ、甘い物は大丈夫でしたか?』
「大丈夫、というか甘い物は大好きだよ。…そっか、千代子ちゃんのお気に入りなんだ。それは楽しみだ。さっそく食べてみてもいい?」
『はい。あ、私お茶淹れます』
「ありがとう」
幸村はベッドに腰掛けて千代子から受け取ったケーキを食べてみる。
その様子を千代子は予め用意されていた簡易パイプ椅子に座りながら見守った。
一口食べ終えた幸村は言う。
「うん、美味しい」
『本当ですか!?良かったです』
それから暫く二人はケーキを食べながら雑談を交した。
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