テニプリ×東京ミュウミュウ
□H嵐前の静けさ
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バイトもひと段落ついて、赤坂の用意したケーキとお茶で東京ミュウミュウたちはティータイムに入っていた。
「今日のケーキも素晴らしいですね」
「新作なんです。試食も兼ねていますから皆さん食べ終えたら感想くださいね」
れたすの言葉に赤坂が笑顔でそう返す。千代子もケーキに舌鼓うちつつ、ふと自分の携帯のランプが点滅している事に気づいた。
それに気づいたイチゴが興味津々で聞いてくる。
「なに何!?もしかして例の人から?」
「例の人って何ですの?」
「あのねー、千代子の気になる人で…名前はたしか幸村精市さんって人!」
『だからそんなんじゃないってば。それにメールが来たのは大阪にいた頃お世話になった先輩だよ』
「何て?」
『えっと、今電話してもいいかって』
「そう、だったら早く電話してあげなさい」
『うん』
千代子はざくろに言われて頷くと、携帯を持って部屋を出た。
そして廊下に出ると、壁に背を預けて懐かしい大阪の先輩へと電話をかけた。
『もしもし』
「千代子!?大丈夫なん!?」
電話に出たと思ったら二言目が大丈夫か、だなんてあの人らしいと千代子は苦笑した。
そしてもうテンプレとなりつつある返事を返すのもいつもの事だ。
『大丈夫ですよ、謙也さんは心配性すぎます』
「そりゃ心配にもなるわ。……見たで、テレビ。リアルでは見られへんかってんけどさっき学校で白石に教えてもらって即携帯で動画見せてもろたわ。もう世間じゃこのニュースで持ちきりらしいやんか」
『そうですねー』
「そうですねーって、おま、人事すぎやろ!」
電話の向こう側で呆れているであろう謙也が想像出来てしまい千代子は苦笑した。
『そう言われてもですね、実際やることは以前と変わりないわけですしむしろ仲間が増えて万々際といいますか……』
東京ミュウミュウが全国生中継されてから一日たって、実際千代子たち東京ミュウミュウの周りでは殆どの変化はなく何時も通りの日常を過ごしていた。
先程までなんか暢気にお茶をしていたくらいだ。
世間の人々も、今時を騒がせている東京ミュウミュウがゆっくりお茶してるなんて思わないだろう。
千代子だって始めは何かしら起こるのではないかと思っていたのでどこか拍子抜けだ。
何か起こってほしいわけじゃないが、何かしら反響があると思っていた分落胆すればいいのか安堵すればいいのか千代子にはよく分からなかった。
電話の向こうで謙也が溜め息をつく。
「俺が心配するんは、今回の一件で東京ミュウミュウの存在が世間一般に知れ渡った。そこで変な輩が千代子…っちゅーよりかはミュウチョコやな。チョコを付け狙う事が出てくるかもしれへん。只でさえキメラアニマなんて化けもんと戦わなあかんのに、人間にも悪い事を企んでいる奴がおるっちゅー話や。小春の話によると、今東京ミュウミュウの正体を暴こうとしている連中が影で動いているらしいで」
『!』
謙也の言葉に、千代子は日吉の存在を思い出した。
確かに日吉のように自分の正体を追っている者が増えたとなると厄介なのかもしれない。
もしかしたら今回の件は自分は楽観視しすぎていたのだろうか。
千代子は反省し気を引き締める。
「ま、そこは跡部が何とか手を打ってくれとるやろ。……ったく、千代子が東京に行っても心配事が絶えへんわ」
『…何だかすみません』
謙也は千代子の家族を抜いて大阪で唯一ミュウチョコの正体を知る人だった。
というのもたまたま千代子が変身している所を見られてしまったから。
正体がばれてからというもの、謙也は何かと千代子を心配して世話を焼きたがった。
千代子にとってはまるで兄のような存在だ。
大阪に居た頃は跡部もいなく、力もまだ開花したばかりで何かと塞ぎごみがちだった千代子にとって謙也の存在は大きい。
『私って幸せ者ですね』
「何や、急に」
電話越しに戸惑った声が聞こえてきて、思わず千代子は笑う。
『こうやって心配してくれる人がいっぱいいて』
そう言えば電話の向こうの謙也も微かに笑ったようだった。
「ま、千代子が元気そうにやってるみたいで安心したわ。…くれぐれも死ぬんやないで」
『はい、気をつけます』
「ほな、元気でな」
『はい、謙也さんもテニス頑張ってください。四天宝寺が全国に行けるのを楽しみにしてます』
「おう、任しとき」
そして電話を切ろうと思ったら、慌てて謙也から待ったと静止の声がかかった。
『どうしたんですか?』
「大したことやないんやけど、ミュウチョコとして千代子は白石に会った事あるか?」
『あ、はい。たしかあると思います。……それがどうかしたんですか?』
「あー…ちょっと気になっただけや、何でもあらへん。ほな、またメールする」
そう言うなり電話は切れてしまった。千代子は疑問を感じつつも、自分も電話を切る。
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