テニプリ×東京ミュウミュウ
□B跡部景吾という男
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大阪にいた千代子は家族と離れて東京に来て一人暮らしを始めた。
その際の手続きや住む場所の手配は殆ど跡部が行った。
跡部家本邸から少し離れた所にある離れを貸し出し(一人暮らしにしてはかなり広い3LDKだ)、生活費、食材費などもほぼ全て負担している。
『ごめんなさい』
生活面のサポートだけではない。
こうやって千代子の身を心配して何かと気を使ってくれている事。
日々申し訳ない気持ちでいっぱいなのだ。
「お前が気にする事じゃねえよ。これが跡部の意思であり俺様の意思だ」
『跡部さん……』
「その代わりと言っちゃなんだが、千代子は美味しい夕飯でも作れ」
『任してください!こっちに引っ越してからというものもう料理は大分お手のものですよ!……あ、跡部さんに庶民の味が合うかどうかは分かんないですが』
千代子はさっそく食材を持ってキッチンへと入ってゆく。
そして冷蔵庫からは肉を取り出していた。
調理をする千代子の姿を跡部は横目で眺める。
学校でも人気のカリスマ、跡部景吾。
そんな彼が気にかける唯一の女。
何処にでもいそうな普通の女、だけど普通じゃない。
その正体は地球の平和を守る正義の味方で、戦う日々を送っている。
―――あの細い腕で化け物と戦っているのか
エプロンから覗く手足は何とも細く、たよりげない。
今にも簡単に折れてしまいそうだ。
野菜や肉を切っている後ろ姿を眺める。
自分より小さい身体、細い手足。
しかし、自分よりも何倍も大きい敵に立ち向かってゆくのだ。
実戦で戦った事のない跡部は、それがどんなものなのか想像もつかない。
しかし、千代子の疲弊し切った顔、たまに負ってくる怪我などを見るとどうも気が気じゃなくなる。
そして歯がゆかった。
女、それも一つとはいえ年下のアイツを戦わせる事。
アイツを危険に曝す事は、本来は嫌悪すべき事だ。
けれどこのプロジェクトには地球の平和が、生き物たちの命がかかっている。
そんな甘い事も言っていられない。
……だからせめて。
せめて裏方でありったけのサポートをしてやりたい。
些細な事でもいい。
コイツの力になりたい。
そう常日頃から思っている。
「フ……この俺様がサポート、なんてな」
『跡部さん何か言いましたか?』
「いや」
『そうですか?』
千代子は鍋の中を掻き混ぜながら後ろに振り返って跡部を見ながら首を傾げた。
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