テニプリ×東京ミュウミュウ

□G東京ミュウミュウ
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千代子が目をパチリと開けると、そこは真っ暗闇だった。
それもそうだ。この部屋は、カーテンや窓に特殊な素材が使われていて日光の一切を遮断している。
この部屋に居れば昼夜問わず暗い。
千代子の身体にとっては優しいが、これでは今どのくらいの時間帯なのか検討し辛いと千代子は苦笑した。
そっと時計を確認してみる。
今は夕方ごろだった。


『んー、久しぶりにいっぱい寝たなあ』


大きく伸びをすれば身体のあちこちがポキポキと音を鳴らした。
まだ身体のだるさは残るものの、熱は少し下がったようだ。
千代子はTシャツと短パンというラフな格好に着替えて財布を持ち、サンダルをはいて外に出る。
二日間もずっと寝っぱなしで身体が鈍ってしょうがない。
外の新鮮な空気も吸いたいと思い、家を出て軽く散歩がてらコンビニにトマトゼリーを買いに行くことにした。
街灯がポツリ、ポツリと点き始める。
そして暫く歩いていたら、思わぬ人物と遭遇して固まる。


『キッシュ!?何でこんな所に……』


そんな千代子に言葉に、ふよふよと浮いていたキッシュは止まって千代子を見る。

「あれ、千代子じゃないか。こんな所で遭うなんて奇遇だね」

千代子の姿を目に入れるなり嬉しそうに飛んでくるキッシュに対して、千代子は警戒心を露わにする。
そして変身ブローチに手を添えてキッシュを睨み上げた。

「へえ」

『何よ』

意味深に呟いたキッシュに千代子はさらに警戒を強める。


「今日は一段と色気が増してるなと思ってさ。もしかして誘ってる?」

熱のせいか薄っすらとピンクづいた肌は上気していて瞳は潤み、何時にもまして薄っぺらいTシャツが肌に張り付いている。千代子はキッシュの言葉に顔を顰めて叫ぶ。

『そんなわけないじゃない!ミュウミュウチョコ、メタモルフォー…ッもが』

変身しようとした千代子の口をキッシュが押さえる。

「今日は千代子と遊びに来たわけじゃないんだ。まさかこんな所で千代子と遭えるとは思っていなかったからね。ま、役得だけど」

千代子は自分の口からキッシュの手を外すと尋ねる。

『じゃあ何しにここにいるわけ。またどうせ変なことでも企んでるんでしょう?』


千代子は冷静に尋ねつつも、内心今は本調子じゃないし変身して戦う気もないから戦わないで済むのなら有難かった。
誰か人なり動物なり襲っているのならば此方も戦闘せざるを得ないが、何もしてこないのなら話は別だ。
取り敢えず、キッシュの出方を窺ってみる事にした。

「んー、内緒」

『……』


まあ馬鹿正直に話してくれるとは思わなかったので、キッシュの反応は予想の範囲内だ。
けど、次の行動は全くの予測外だった。
気づけば、千代子はキッシュの腕の中に閉じ込められていた。


「抱き心地いいね。でもちょっと熱いなあ、熱でもあるのかい?」

『ちょっと放してよ!』

「力も弱々しいし。強気な千代子も好きだけど、弱った君もまた格別だ」

『アンタに言われても嬉しかないわよ!』


ビンタしようと振り上げられた千代子の手は、いとも容易くキッシュに腕を掴まれて阻まれてしまった。
物理的攻撃を簡単に止められてしまい、千代子は軽く舌打ちをする。

『(柔道なり空手なり習おうかな。一発くらいキッシュをひっぱ叩いてやる!)』

密かな野望を心に抱いていると、殺気を感じたのかキッシュは千代子から離れた。
そのままキッシュは宙に浮くと、千代子に大きく手を振る。

「それじゃあ僕はもう行くよ。じゃあまたね、千代子!」



そう言って消えるキッシュに千代子は脱力する。
安堵から気が抜けたのだ。
正直、今キメラアニマを仕掛けられてもしんどいのが正直な感想だ。


しかし、嫌な予感がする。
キッシュのあの様子じゃ碌でもない事を企んでいるに違いない。
それに今は6人目の新たな仲間に関して、此方もヤキモキしている所なのだ。
起きた後のメールにいちごから報告が来ていてどうやら新たな仲間は一癖あるらしい。


正直、今の自分が行った所で足手まといになるのは自覚していた。
微熱でフラフラとする身体。
ここは大人しく跡部に言われた通りにちゃんと休んで万全の状態で戦いに挑まなくてはと思い至った。
それまでは、仲間を信じて待つ。

今自分に出来ることはそれだけなのだ。




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