テニプリ×東京ミュウミュウ
□G東京ミュウミュウ
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次の日、大分調子も良くなった千代子はカフェミュウミュウに顔を出していた。
カフェはまだ客は一人もおらず、店内は静かだった。
いつもなら騒がしくしている歩鈴が珍しく大人しいと思い、千代子はいちご、れたす、歩鈴の三人で固まっている所に近づいていった。
『おはよー。皆で固まって何やってるの?』
「あ、千代子!ちょうどいい所に来た」
『ん?』
いちごに腕を引っ張られ、そのまま4人で集まって円になる。
三人の顔色が珍しく深刻そうで千代子はまさか、と身を固くする。
『6人目の仲間、うまくいってないの?』
「うん。実はその事で昨日ね……」
そして千代子はいちごに昨日あった出来事について教えてもらった。
どうやら、6人目の仲間も含めいちご達はキッシュの罠にかかったらしい。
しかしSの6人目の仲間、もとい藤原ざくろはいとも容易くキメラアニマを倒してしまい、それどころかキッシュに反撃も食らわせたのだと。
それに喜ぶいちご達だったが、みんとが感激のあまりにざくろに抱きついたが突き飛ばされたあげく「うざい」と言い捨てられたそうだ。
そしてそのままざくろは去って行った。
いちごから一連の話を聞き終えた千代子は、やはり嫌な予感が当たってしまったと気を遠くする。
それにしても、藤原ざくろと言えばみんとの大の憧れの人だ。
以前、たまたま自分たちの理想のタイプの話になって、何故かみんとがモデル兼女優でもあるざくろを数時間に渡って延々と力説していたのを思い出す。
そんな憧れのざくろに拒否されたとあったら、みんとのショックは計り知れないだろう。
『そういえば、みんとは?』
「あそこなのだ」
そう言う歩鈴の指差す先には、ホールの隅の方のテーブルに座りボケッと宙を見ているみんとがいた。
その背中には大きな影を背負っているように千代子は見えた気がした。
さらには、「お茶の時間ですわ」と呟いてテーブルの上に置かれてあった花瓶を手に取っていた。
そして花瓶に口を付けようとしているみんとに、千代子達は青褪めた。
『ちょ、みんと!しっかりして、それティーカップじゃなくて花瓶だから!』
千代子は慌ててみんとの手から花瓶を取り上げる。
花瓶を取り上げられたみんとは手をそのままに、「あら、千代子。来ていらっしゃてたの」と暢気に呟いていた。
その目は虚ろだ。
いちごは頭を抱える。
「重症だわ、こりゃ」
もし千代子達が止めていなかったら、誤って花瓶の水を飲もうとしていたのだ。
このままみんとを放っておくと何をしでかすか分からない。
千代子、れたす、歩鈴の3人はいちごの言葉に同意するように深刻そうに頷いた。
いちごはみんとの様子を見かねて、地下に居る白金と赤坂の元へと向かった。
その後をれたすや歩鈴も着いて行く。
千代子はまたみんとが変なことをしでかさないように見張っておく事にした。
ずっと座り込んでいたみんとが突如立ち上がり、ふらふらと歩き出すものだから千代子もその後を追った。
みんとをおって地下に行くと、ちょうどいちごの怒鳴り声が聞こえてきた。
「あの人、ホントに仲間なの!?」
千代子が部屋の扉を開いて中の様子を覗くと、白金と赤坂の前にいちご、れたす、歩鈴の三人が立っていた。
「あの人は仲間になる気なんてないって言ってたのよ!?それもきっぱり。そんな事言われたら私たちどうすればいいわけ?そもそもアンタが6人目の仲間を探せって言ってるから頑張っているのにそれなのにこんなのってひどくない!?おかげでみんとなんてお化けみたいにユラーっと…」
いちごのマシンガントークに千代子が驚いていると、ちょうど千代子の傍をいちごが言っていたようにまるでお化けみたいなみんとがゆらーっと通り過ぎて行った。
「なに怒ってるんだ?仲間になるならないは本人の意思だろ。それを説得するのがお前の役目だぜ」
「そんなのいつ決まったの!?」
「今」
「何ですってー!?」
ぐぬぬ、といちごが白金を睨んでいると突然歩鈴が叫んだ。
「分かったのだ!」
そして歩鈴は得意げに語りだす。
「きっとざくろのお姉ちゃんは悪い敵なのだ。仲間でなければ敵なのだ!」
歩鈴の言葉に白金はフム、と頷く。
「案外的を得ているかもな」
その言葉にいちごは悲しげな表情になる。けれど一度頭を振るうと部屋を飛び出してゆく。
ざくろさんを探してくる!と言い残して。
れたすと歩鈴もその後を追った。
そんな三人の様子を見送った白金と赤坂は苦笑をもらす。
「ざくろさんを敵ではないと信じているようですね」
「アイツはそういう奴だ。……だからミュウプロジェクトには打って付けなんだ」
「成る程」
一連の様子を眺めていた千代子はクスリと笑った。
普段何かと衝突の多いいちごとみんと。
……まったく、素直じゃないというか何と言うか。
『みんと』
優しくそう呼びかければ、みんとはぼんやりと千代子を見上げた。
そんなみんとの頭に千代子はそっと手を乗せる。
みんとは不思議そうに千代子を見た。
『いちごはみんとの事が大切なんだね』
「!…急に何を言い出すんですの」
『いちご言ってたよ。藤原ざくろさんの目が会ったばかりの頃のみんとの目が似てるって。だからきっとざくろさんが仲間になってくれるって』
その言葉にみんとは目を丸くする。
『悪い人じゃないって信じることが出来る。…もちろん私もそう思うよ』
千代子の言葉にみんとは頬を染めると、フイと視線を逸らす。
千代子は軽くみんとの背中を押した。
『ほら、みんとも早く皆を追いかけよう?』
「……千代子はどうするんですの?」
『私は私でざくろさんにアプローチを仕掛けてみるよ。ちょっとしたツテがあるから』
「そう……先に行ってますわ」
『うん』
いつものように戻ったみんとが駆け出して行くのを見送りながら、千代子はポケットから携帯を取り出した。
そしてとある人物へと繋げた。
『もしもし、跡部さん』
「千代子か。もう熱は大丈夫なのか?」
『はい、もうすっかり良くなりました。…あのそれでちょっと頼みたいことが……』
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