テニプリ×東京ミュウミュウ

□G東京ミュウミュウ
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カツカツとローファーが地面を歩いている音が聞こえて、ざくろは思考を中止した。
写真撮影の合間の束の間の休息。
それさえも潰されてしまうのかと内心で溜め息をついた。
おそらく最近自分の周りをうろついているミュウミュウの一人だろう。
自分に会いに来ては仲間になれ、仲間になれと口煩くざくろは迷惑に思っていた。
自分には全くその気などないのに。

薄暗く、赤い夕日が満ちる部屋にその子は現れた。
初めて見る顔だった。



『藤原ざくろさん、ですね』


近づいてきたのはおそらく一つか二つくらい年下の少女。
黒髪を後ろで一つに束ねているという何処にでもいそうな平凡な女の子。
しかし、その胸に付けているネームプレートだけは異彩を放っていた。


「……跡部?」


その名前には覚えがあった。
仕事関係でとあるパーティーに参加した時に、マネージャーから聞かされた。
同じくそのパーティーに参加していた跡部家は名のある財閥だと。
その子息がざくろと歳が近い事もあって紹介され、挨拶を交わした。


……跡部景吾。
第一印象は食えない男。
それきり会うことはなくもう二度と関わらない事かと思っていたが、再びこんな形で関わる事になろうとは。


『跡部をご存知で?』

「ええ、前にパーティーで一度お会いしたわ」

『成る程。……あ、跡部家はミュウプロジェクトのサポーターを任せれているんです』

「……」


その言葉でざくろは全てを察した。
つまり、やはりこの少女もミュウミュウで自分を仲間にと言いに来たのだろう。
……跡部の力を借りて。


さすがに跡部の名を出されてしまっては、ざくろも無下にする事は出来ない。
心が冷めてゆく。
この人たちはどこまで自分を追いこめれば気が済むのだろう。
こんな手段を使って、まるで拒否権を与えないように。
ざくろは少女を睨む。

それに気づいた少女は苦笑した。

『ああ、ごめんさない。跡部さんの名前を借りたのはこの建物に入れてもらうため…ざくろさんに会うためだけに跡部さんに頼んだんです。だから跡部家の力で貴女を脅そうというわけではなくて、そもそも私にそんな権利は持ち合わせていないです。……すみません、これ付けたままだとややこしかったですね』


そう言って少女は胸に付けていたネームプレートをポケットにしまった。



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