テニプリ×東京ミュウミュウ

□G東京ミュウミュウ
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少女…千代子は美少女を目の前にしてドギマギしてしまう。
雑誌やテレビなどでは何度か見たものの、やはり実際に自分の目で見ると迫力がある。
しかも彼女は今怒っていて、その迫力も二倍増しだ。
美人が怒ると怖いとはこの事だと、千代子はひしひしと感じた。

…跡部の名を使うのには抵抗があった。
でも、ざくろのような有名人に一般人である千代子が会いに行くためには多少強引な手を使わざるをえなかったのだ。
まず会って直接話してみない事には始まらないからだ。
跡部さんの名前を使えばすぐ、撮影スタジオの中に入れてもらえてざくろのいる控え室まで行く事が出来た。
何故ざくろが頑なに仲間になるのを拒むのか。
彼女の本音が聞きたかった。
もしかしたら跡部の名を使えば彼女は頷いてくれるかもしれない、でもそれじゃあ駄目なのだ。


『わたし、ミュウチョコ改め黒川千代子っていいます』

「……」

『あの、どうして仲間になるのを拒むのか教えていただけませんか?』


ざくろの切れ長な目が千代子を見る。そしてその口を開いた。


「貴女も白金、赤坂の二人組み……いえ、貴女の場合は跡部かもしれないけど変な光を浴びせられたのでしょう?」

『そう、です』


そう、忘れもしない思い出。
その時、千代子は家族旅行でたまたま東京に来ていて、たまたま親と逸れて、たまたま一人で彷徨っていた所を変な光で浴びさせられたのだった。
その時は何が何だか分からずパニックになっていたけど、後から思うとそれが全ての始まりだったのだ。
それから暫くは何もなかったけれど、大阪に帰ってからというもの大変だった。

急に体質が変わるわ、変な力に目覚めるわ、変な化け物に襲われるわ。
そして自分が前に在学していた四天宝寺に跡部が率いる氷帝が練習試合に来て、そこで初めて跡部と出会い自分がミュウミュウというものであると告げられた。
その時の衝撃といったら、尋常ではない。



「例えどんな理由があろうとそんな勝手な事をする人達に力を貸す気にはなれない」



ざくろの気持ちは痛いほどよく分かった。
今の今までずっと平凡に人生を歩んで、部活動に励んで、友達といっぱい遊んで、恋をして……そんな青春を夢見ていたけれど、結局それは儚くとも夢のままで終わったのだ。
どれもこれもミュウミュウになったせい、とどれだけ思ったことだろうか。
自分の時間を削り、常に危険と隣り合わせの日々。
何度自分をこんなにしてしまった人たちを恨んだ事か。


それでも誰かがやらないといけないのだ。
キメラアニマに対抗できる、レッドデータアニマルのDNDを持った戦士たち……それが千代子たちなのだ。
今現在地球の未来を救えるのは自分たちしかいない。


『ざくろさんの気持ち、痛いほど分かります』

でも、6人全員誰一人欠けてはいけない。

『でも、私たちには貴女が必要なんです、ざくろさん』

辛いことはたくさんある。
でもそれ以上にかけがえのないものもあった。
自分には仲間が居る。
辛さも嬉しさも悲しみも楽しさも全てを共有し合える仲間。
みんながいるからここまで進んでこれた。


『大切な仲間だから』

「……」

千代子はじっとざくろの瞳お見つめる。
暫くの沈黙の後、ざくろが口を開こうとした、その時だった。
静寂を破ったのは千代子の腕時計。
つまり、キメラアニマの出現を知らせる合図だった。千代子は憤慨する。


『もう、こんな大切な時にキメラアニマ!……すみません、ざくろさん。私行かなくちゃ』


千代子は一度会釈すると駆け出す。
そんな千代子にざくろは手を伸ばしかけたがその手もピタリと止まった。
ちょうど千代子と入れ替わるようにしてキッシュがざくろの前に立ち塞がったからだ。
キッシュは怪しげな笑みを浮かべてざくろを見る。




「千代子とも遊びたかったけど、今日は残念ながら出来ないや。だから千代子にはここから少し離れた所で別のキメラアニマと遊んでもらう事にしたよ。今日の標的は……」




君だからね。




そう言うとキッシュは怪しく微笑んだ。




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