リクエスト

□オチたのはどちらか
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この世界に生まれてから10年と少し。
私は前世の世界でとても流行っていた、かの有名なテニスの王子様の世界にトリップした。
もちろんバッチリ原作は読破していたし、あげくには二次創作にも手を出していた。そして、なんと、今回トリップとは言ってもただのトリップではないのだ。
所謂転生トリップというやつで、私はあの幸村精市の妹としてこの世界に生まれた。電波w乙wwとか思わないで欲しい。
本当に我が兄はテニスで五感を奪っちゃう怖いお方なんだから。
実際に試合観戦に行った時にこの目で見たから間違いない。


……と前置きはここくらいにして、私は今ある計画をたてている。




その名も

“ドキッ。周りは男だらけ、幸村名前による幸村名前ちゃんのためのモテモテ逆ハー大作戦!”

である。




あ、ちょっと。
缶を投げつけてくるのは止めて欲しい。
こう見えて本人は至って大真面目なんだから。

それを我が兄に話したら、さっきまでテレビを見ていた兄がテレビから視線を外さず投げやりに言い放った。





「あー、うん。いいんじゃない?」

『そりゃないぜ兄貴ィ』

「まあ名前は俺に似て顔だけはいいんだし、いけるんじゃない」

『私いいの顔だけですかそうですか』

「ウソウソ。俺は名前の頭の回転が速い所も買っているんだよ。名前に悪巧みを考えさせたら右に出る者はいないよね。ウチの詐欺師ともきっと気が合うよ、うん」

『それって褒めてる?』

「うん、褒めてる褒めてる(棒読み)」

『……でも何だかんだ行ってお兄ちゃんは手伝ってくれるんでしょ?』


名前は甘えるように精市の背後から手を回して抱きつく。
そして妖艶な笑みを浮かべた。
精市も薄っすらと口元に笑みを浮かべるときゅっと名前の手を握った。


「名前が俺以外の男に擦り寄るのはあんまり見たくないけど、まあ面白そうだし協力してあげるよ」

『ありがと。大好き、お兄ちゃん!』

名前はギューっと精市にしがみ付く。
名前は精市のフワフワした髪の中に顔を埋めながらほくそ笑んだ。
これから薔薇色の中学生活が待っている。
これがニヤけずにいられるだろうか。
生まれてこのかたずっとこの時を待ち望んでいたのだから。








名前は学校の校門の前で、昨日家で兄といていた会話を思い出す。

桜が満開の今日この頃、私幸村名前は氷帝中学に入学する。

え、てっきり立海に行くかと思ってただって?
ふふん、残念でした。


確かに兄が立海だしあそこも美形揃いで迷ったけど、氷帝メンバーもなかなか魅力的なものがる。
それに、やっぱりテニスの王子様といえば跡部景吾でしょう。
彼をこの私の魅力で骨抜きにさせてみせる。




『見てなさい』

名前は舌なめずりすると意気揚々と立派な門を潜り抜けた。





やがてこの計画はひっそりと行われてゆく。
そうしていくらかの月日が流れた。



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