白闇の書(長編)

□白哀華 第三章
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「この写真を見てると、思い出すな・・・」

「ああ。」


楽しかったあの頃。

大好きだった先生。

そして、その先生との別れ。



「この写真の頃は、本当に幸せだったのう。」

「・・・・そうだな。」

写真を見つめながら坂本が言うと、桂は頷いた。

屈託の無い笑顔で映る4人の顔には、幸せだという気持ちが溢れてきていて。





「・・・・・あの頃に、戻りたいな。」


銀時はぽつり、とそう呟いた。

桂と高杉と坂本が銀時を見る。

「あの頃に・・・・・・戻りたい。」


銀時はもう一度呟くと、再び俯いた。

桂が銀時の肩に手を置く。


「・・・・・・・そうだな。」


高杉が少し小さめの声で呟いた。


「俺だって、戻りてぇよ、あの頃に。」






「晋助、金時、ヅラ・・・。…なら、戻らんか?」

「・・・辰馬?」

突然の坂本の提案の意味がよく分からない。

戻る?

・・・どうやって?

「・・・・松陽先生は、戻らん。それは、本当に、仕様が無いきに…。」


「じゃが、まだ戻る事ができる事があるじゃろう。」


「・・・・・・・ふ、そういう事か。」


桂が少しだけ微笑む。


高杉と銀時は、首を傾げた。


「・・・・何だ?」

「ヅラも分かったのか?」

「ああ」




「こう、するんじゃ。」

そう言って坂本は桂に目配せをする。

「うおッ!?」

「な、何しやがる!!」

そして、立ち上がると、高杉と銀時をガバっと抱きすくめた。

「おまえら、そろそろ仲直りばしたらどーじゃ?」

「!!」

坂本は笑うと、更にぎゅーっと2人を抱きしめた。

「ちょっ、辰馬、苦しい、離せって」

「おい坂本ッ、離しやがれ、痛え、」

「3人共、俺も混ぜろ!」


そこに桂も参加。


逃れようとする高杉と銀時を抱きすくめる坂本と桂。

大の大人4人が子供のようにじゃれ合う、奇妙な光景になった。

高杉を警戒して部屋を覗いていた桂の部下達が唖然としている。


「仲直りばしたら、離してやるぜよ☆」

坂本はにこりと少々黒めの笑みを浮かべた。

高杉がふざけんなモジャ毛、と坂本を蹴り上げる。

「第一、てめぇらが勝手にぶった斬るとか言い残して行ったんじゃねーか」

「は?ふざけんな、てめぇの部下の仁蔵の紅桜云々がそもそもの原因だろ!?謝りやがれチビ杉君!!」

「んだと、てめぇ・・・ぐおッ、ちょ、重い、いい加減どけ坂本」

「離さないぜよ〜」

「ははっ、高杉、観念しろ。銀時なんかもう諦め顔だぞ。」

桂が何故か勝ち誇った顔で高杉を見つめる。

銀時は大人しく抵抗を止めていた。

そして、溜息をひとつ・・・。





「もう、いいよ・・・・」

「?」

そして高杉の方を向いて、少しだけ真剣な顔になった。

「晋助・・・だから、その。」

「?」

「・・・・あー・・・。だからァ、何ていいますか・・・」

「さっさと言えよ。」




「・・・・・・・・・・ごめん。」



銀時が頭を下げる。

高杉は怪訝な顔で銀時を見る。

「・・・・何が。」

「・・・・・・・散々、船とか壊しまくって、ぶった斬るとか言って・・・んで・・。」

銀時が口篭る。

「俺も謝る」

桂も頭を下げる。



高杉は唖然としてしまった。








…何故こいつらは謝る?

紅桜にやられて大怪我をしたのも、巻き込んだのも俺なのに。


何故俺から離れていかねぇ。

俺はてめぇらを突き放した。

仲間でもないと言った。

・・・・・それなのに。



何故こいつらは俺に頭を下げる?







「なんで、てめぇらが謝んだよ。」

言うと、2人は顔をあげた。

高杉は少し目を伏せた。


「・・・・・・・・なんで俺に怒らねぇ」

「・・?」

「・・・・・・散々やったのは、俺だろ。」

高杉が言うと、桂と銀時はキョトンと顔を見合わせた。

「え・・・だって・・・」




「「・・・・・戻るんだろ、あの頃に。」」

「・・・・・は?」

「さっき辰馬言ったじゃん、『あの頃に戻ろう』って。」

坂本が頷く。

「・・晋助、まだわからないのか。」

桂が笑う。銀時も微笑む。


「・・・先生は戻らない。だけど、俺達は、まだ生きてんだ。」

「昔みたいに4人、いつも一緒で、いつも笑って。そんな関係に、戻りたいからだよ。」


「・・・・・っ。」





「仲直りしよーぜ、晋助。」





銀時が高杉に手を差し出す。









…ああ、そうだった。






こうやってこいつらはいつも不器用な俺の心を





不器用に救ってくれていたんだ・・・












「・・・・・ふ、そうだな。」






高杉は、柔らかい笑みを浮かべ、差し出された手を取った。









そして、再び4人の新たな時が動き出した・・・





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