白闇の書(長編)

□白哀華U 第一章
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その『ブスッ娘クラブ』のホステスに盛大に見送られ、酔い潰れかけている坂本と、

すっかりトラウマになってしまった桂、

そしてなんだかんだで隣りで別嬪に酌してもらっていたので

そこそこな気分の銀時と高杉は、日輪に用意してもらったアジトへと向かっていた。










「いやァ〜、やっぱり吉原はいいのー。女の子だらけじゃきに!!」

「今日限りは、お前の馬鹿さがお前を救ったよな。ウン」

「俺は暫く女に近づけないかもしれない。どうしよう銀時」

「大丈夫だヅラ。あのクラブの暖簾さえくぐらなければ基本綺麗な女しかいねぇからよぉ」








「それにしても銀時ィ。てめェ随分此処の遊女達にはモテるようじゃねェか。」

「僻み?」

「阿呆か」

「舟から移って、本当正解ぜよ!!」






あっはっはと笑い、しかし数秒後にうっと息を詰まらせ吐き気と闘うという行為を繰り返す坂本は、

船酔いでリバースを繰り返していた時とあまり変わったようには見えない。










「ところで銀時。沖田はもうアジトにいるのか。」

「…さーなぁ。いるんじゃねぇの?」

「未成年だからなァ。」

高杉が煙管を銜えたまま、ククっと笑う。

「晋助が法律を気にするとなんか笑える」

「黙れ天パ」

「金時と晋助は相変わらず仲がええのう…うぅッ」

「とりあえず辰馬は黙っとけ」





銀時がぺいっと坂本を叩いていると、おっ、と桂が何かを見つけたように声を出す。

顔を上げると、向かいから明るい髪色の青年が歩いてくる。




噂をすればだな、と桂が呟く。














随分とご機嫌なのか、軽快な足取りで近くまでやって来た青年は、にこりと微笑んで見せた。

「…旦那方、今お帰りですかィ?」

「あぁ。日輪と月詠は一足先に行って待ってるそうだ」

「そーですかィ。じゃ、ご一緒させて下せぇ。」


いいよ、と銀時が言い、沖田がじゃあと銀時の横を歩き始める。












「それにしても旦那、聞きやしたぜィ。万事屋救世主伝説」

「勝手に伝説にすんなよ。…それに、そんな大そうな事してねぇよ」





「いやァ、アンタ既に吉原版攘夷をやり遂げちまったらしいじゃねェですかィ。天人の中でも最強種族の王を倒しちまったんだから」

沖田の言葉に、銀時は呆れたように溜息を吐いた。

「月詠の奴、遊女には口止めしてあると言ってたが…。随分口軽ぃじゃねぇか。」

「旦那、俺ァ一応旦那の仲間として客人扱いされてたんですぜィ?口止めされる謂れは無ぇや。」

それはそうだがなぁ、と銀時が不満げに口を尖らせていると、先程まで黙っていた桂が急に口を開いた。






「おい、沖田。先程から気になっていたのだが。」

なんとも言えない顔の桂に、沖田は首を傾げた。

「…?…どうかしたんですかィ?」

「どうしたもこうしたも…。…その後ろの者達はなんなのだ」

桂が、沖田の後ろを指差す。

地面に座り、所謂『おすわり』をして首輪を付けた3人の女が、沖田の背後で座り込み整列している。

ちらりと見て、沖田は爽やかな笑みを浮かべた。







「俺の飼い豚どもでさァ。旦那方もお1ついかがですかィ?」

高杉の口元が僅かに引き攣る。坂本は吐き気と闘っている。


「俺は本当はナース派なんだが…まぁいーや。とりあえず一匹頼む」

「了解でさァ」


「待て待て待て!!女性を狗のように扱うなど貴様ら男として恥かしく思わぬか!!」

沖田が3人の女性のうち1人に、銀時の元へ行くよう指示をしていると、桂が青ざめた顔で止めに入る。


「そういうプレイでさァ。ちゃんと由緒正しい店で由緒正しい遊びをしただけですぜィ?」

「なんで持ち帰っているのだ」

「そりゃあ、俺が主なんでねィ」

「店に帰れ」


結局一悶着有り、渋々女達を店に返した沖田は、少し御機嫌斜めだ。

桂は、これから暫らくは沖田を監視しなければならないのかと、溜息を吐いた。








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