出来るようになりたい
一人、部屋の中でカードと格闘していた。
あたしはあの日に侑人さんが見せてくれた「フラリッシュ」に魅せられていたの。
カードが侑人さんの手の中で、まるで生きているかのように踊り、動いていく…。
手の動きが速すぎて分からないけれど、練習したらあたしのも出来るかな?
そんな事を考えて、侑人さんには内緒でトランプを用意して貰って、夜中にこっそりと練習していたりする。
でも、カードを落としてばかりだ。
「どうやるのがいいのかな?」
落としたカードを拾いながら呟くと
「練習用にカードに見立てた物もあるんだよ?
それで練習してみるといいと思うけどね」
「!!」
突然後ろから聞えた声に吃驚して、またカードを落としそうになる。
まだ拾えていないカードを侑人さんは拾うと、あたしの手の中に返した。
「な、な、なんで侑人さんがいるの?」
「恋人の部屋に来ることに理由がいるの?
***に逢いたかったから来ただけさ。
何かやっているとは思ったけどね」
まさか練習してるなんて。
侑人さんは苦笑しながら言うと、あたしの手の中のカードを取って、遊戯室で見せてくれた「フラリッシュ」をして見せた。
「イキナリは無理だよ?
最初は“charlier cut”と言う技の方がいいかな?」
そういうと、片手で半分に分けたカードを入れ替えた。
「え?どうやってるの?」
侑人さんの手元を覗き込むように
見ると、ゆっくりして見せてくれた。
「親指とひとさし指がポイントなんだよ」
もう一度して見せてくれる。
そして、あたしにカードを返す。
「ん?どうやるの?
わかんないよ?」
やり方がわからないあたしはカードを見つめる。
「こうするんだ」
「!!」
背後から侑人さんの声がして、あたしの後ろに回ってきて手を重ねると、カードの動かし方を教えてくれた。
「ねえ、侑人さん」
「なんだい?」
会話をしていても、手の中にあるトランプはぎこちない動きで回っている。
「あたしも練習したら出来るようになる?」
「***の努力しだいかな?
でも、出来なくてもいいんだよ。
君がコレを見て喜んでくれる方が嬉しいからね」
嬉しいよ。
だって、本当に侑人さんの技は凄いもの。
でも、侑人さんはそういうけど、出来るようになって驚かせてみせるんだからね!
だから、またこうやって教えてねvv
* FIN *