そんな時に小さな事件が起きた。
ユノの恋人がヒチョルと一緒のユノを見掛けて、それが原因で二人は別れたのだ練習生の間で話題になる。
同じ練習生だったユノの恋人ジェシカは、可愛いけれどあまりいい噂を聞かない。
ユノがそんな彼女と別れたのは朗報だけど、なんで原因がヒチョルなんだ、とジェジュンは秘かに憤慨した。
――やっぱり、ユノはヒチョルヒョンが好きなのかな…?
ジェジュンにせよ、自分が稀有なほどの美少年であることは百も承知だ。
そんなジェジュンに憧れ、言い寄ってくる練習生の数も少なくない。
それでも年上で洗練されたヒチョルを見ると、どうしてもユノの隣に居るべきなのは自分ではなくヒチョルなのではないかと諦めてしまう。
恋人との仲を裂いておきながら、相変わらずヒチョルはユノにベタベタくっついている。
ジェジュンはそんな二人を見るのがつらい。
「…お先に失礼しまぁす……」
控え目な声で扉を押し開くジェジュンの背後から、ユノの明るい声が響いた。
「あ、ジェジュン帰るのか?一緒に帰ろう!」
ユノと肩を並べて帰るだけでもウキウキとジェジュンの心は騒ぎ出す。
跳ねるような足取りで「ヒョンより先に帰って大丈夫?」と訊いていた。
大またで歩きながら、「え?何で?」と、ユノは真っ直ぐな黒い瞳できょとんとジェジュンを見つめる。
忽ちジェジュンの頬は熱くなるのを感じ、気付かれないように視線を外す。
「や、ヒチョルヒョンは、…ユノのことお気に入りだから…さ」と、仲間同士のからかいに言葉をすり替えた。
その言葉に突然ユノは立ち止り、「ヒョンが?俺を?」と、素っ頓狂な声のまま道端で大笑いをはじめ、ジェジュンを慌てさせる。
「ユノっ…人が見てる…」
それでなくても美しい少年二人が歩けば、道行く人が振り返る。
ユノの大笑いで、通りの向こうの人たちまで注目しているのを見てジェジュンは焦った。