長編

□scene.10
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初めて渡った異国の地でありながら、自分たちがどれだけ注目されているのかを知った。

数名のスタッフ以外は外国人の中で、メンバーは浮き足立つ思いで緊張していた。


そんな中、ユチョンの体調が回復しない。


ホテルの部屋割りも、共倒れになるからというメンバーの反対を押し切ってユノがユチョンとの同室をかって出る。



「ユノ…、ゴメン!もとはといえばユチョンの喘息発作はオレがむやみに連れまわした所為なんだから、オレがユチョンを看てるよ」


「ジェジュン、お前の所為じゃないよ。メンバーの健康管理は俺に責任がある」


大きな潤んだ瞳で見上げるジェジュンに、ユノは小さく微笑んで大きな掌でその頭を撫でる。


「それに、ユチョンを事務所の先輩たちに紹介してくれていたんだろ?色々気を使ってくれてありがとうな」



――ちがうんだ、ユノ…。オレがユチョンを連れまわしてたのは、お前とユチョンが同じ部屋で寝ることがイヤで…邪魔してたんだ…でもそんなこと言えない…


「…ごめん、じゃ、後で代わるから…ね」


自分の浅はかな計画が結果的に墓穴を掘ってしまったようで、ジェジュンは落ち込んだ。


ユチョンは、中国に着いてからいくつかのスケジュールと軽いリハーサルをメンバーと共に消化し、既にホテルのベッドで寝(やす)んでいる。



「ありがと、ジェジュン。頼りにしてるよ。じゃ…」


既に明かりを薄くした部屋へ、ユノが吸い込まれるようにその姿を消すと、ジェジュンは言いようのない不安に苛まれた。
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