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□原色、猫のスクラップ
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ふいに顔を上げたときに目に入ったその絵に、言葉にならない、強い「何か」を感じた。


キャンバス全体が、黄色やピンクや水色のパステルカラーで埋められているその絵は、とても優しげな表情であたしを見ている。

目に留まった瞬間から、目が離せない。
「何か」に強く惹かれている。

じっと見つめる。
その絵だけを、目に入れる。

「何に」、あたしは惹かれているのか。


一匹の猫が大きなキャンバスの隅にちょこんと座っている。
けれど、そいつに、色素はない。背景として綺麗に描かれているパステルカラーを透かして、そいつはあたしに背を向けてそこに座っていた。
その猫をじっと見つめてから、あたしは視線を、そいつの影に移した。

何か、おかしかった。

その「猫」よりも、「影」のほうがずっと強く存在していた。

その「猫」の姿は透明に等しいのに、そいつの「影」は淡い、けれど強めの色で塗られているのだ。


不思議だ、と感じた。
そして、それがすごく綺麗なのだ。


影だけを見つめた。
そして、あたしは気づく。
一番あたしが惹かれたものは、きっとこれだ。
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