企画

□見えない住人
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文:きみ

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 これはつい最近あった話なんだけれどね。





見えない住人



語り手:コプチェフ








 俺とボリスって10階建のマンションの5階に住んでるんだけど。え?違う違う、偶々同室なだけ、まぁ付き合ってるけどね。皆には内緒だよ。

 それでね、その日『時間外労働で疲れたね』なんていいながらエレベーターに乗ったんだ。




「なんで全部手書きなんだろねぇ疲れたぁ」

「しらね」

「帰ったらご飯つくるね〜」




 なんて話ながら俺が5階のボタンを押したんだ。夜も遅かったから、ふたりきりでね、ちょっと嬉しかったのは内緒。えへへ、仲良いでしょ。

 それからすぐだったかな?
パネルの7のボタンが光ってね、7階でエレベーターが止まるのがわかたんだ。そうしたらボリスが珍しく慌てて、2、3、4って全部の階のボタンを押し始めたからびっくりしたんだ。


「ボリス?どうしたのさ…」

「いいから降りるぞ、早く!!」

「え?ま、まって…」



 結局2階は通りすぎちゃって3階でエレベーターが止まったんだけど、ボリスったら扉が開く前に俺の腕痛いくらい掴んで扉こじ開けてエレベーターから飛び出したんだ。

 それから階段かけ降りたボリスが『部屋には帰らない』って言うから、その日は近くの同僚の家に泊めさせて貰ったんだけど。
その日から、ボリス寮のエレベーターにだけは絶対乗らなくなったんだ。なんでだろうね、理由は教えてくれないし。

 だから一緒に帰るときはいつも階段をつかうんだ、いい運動だよ仕事が仕事だから体力作りにもってこいだね。

 でも、ほんとになんでなんだろね。まぁいいんだけどね、階段のぼるのボリスとなら楽しいし。




 あはは、そんな顔しないでよ、これで俺の話はおしまいだから、ごめんね、下らない話に付き合わせて。


 え?うん、一人のときはエレベーター使ってるよ。



あれ、どうしたの?カンシュ




そんな青い顔して。









<暗転>















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