企画

□足音
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文:タコクラゲ

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これは俺が味わった身の毛もよだつ恐怖体験だ。




足音


語り手:カンシュコフ







 俺はその日は夜の勤務で、深夜に監獄内の見回りを行っていたんだ。

 囚人の牢の小窓を開けて、一部屋一部屋、囚人の様子を確認していく…
 とっくに消灯時間も過ぎていたしな。当然ながら廊下は真っ暗だし、明かりと呼べる明かりと言えば、うっすら点っている非常灯くらいで、後は自分の持っている見回り用の小さな懐中電灯だけが頼りだった。



コツ…コツ…コツ…



 監獄の壁は厚い。その上深夜ということもあって、自分の足音ばかりがやたらと廊下に反響してうるさいくらいだった。



その時だった。


 自分の足音に混じるようにして聞き慣れない音が俺の耳に入ったんだ。



くちゃ…



 さっきまで廊下に響いていた乾いた靴音とは明らかに異なる、水分を含んで、それでいて粘着質な…何て言うか、質量を持ったような音が、自分の足音と重なったんだ。



 後ろを振り返ってみても誰も居ない。



 最初は気のせいだと思った。
いや、俺は最初からその音の存在を認めたくなかっただけかもしれない。

 でも、俺が一歩一歩足を進める度に、






くちゃ…ぐちゃ…







 俺の歩くタイミングと同じようにして、ぴったりと その音もついてくるんだ。
何だか不気味に思った俺は少しずつ歩く速度を速めた。






ぐちゃ、くちゃ、くちゃ、ぐちゃ




これは聞き間違えなんかじゃない

 後ろを振り返って正体を確認しなければと思ったんだが、振り返ればきっと後悔するという恐怖心がどうしても拭えない。


 俺は気付かない振りをしてさっさと休憩室に戻ってしまおうと更に足を速めた。
休憩室まで行けば他の看守も居る電気も点いている。そこまで行けばきっとこの音も止んで俺の勘違いだったということに出来る。


そう思った、のに。







ぐちゃ、



ぐちゃ、くちゃ、




ぐちゃ、







それでも足音はぴったりとついてくる。



もう止めてくれ!


急激に背中に寒気を感じた俺は、一目散に休憩室へと走り出した。






ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ








ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ!







 こんなに必死で走っているにも関わらず、その足音は、俺の立てる足音と寸分違わずついてくるのだ。


そこで気が付いたんだ。








 音は、後ろからついてきているんじゃないということに。








 俺は上がりきった息と恐怖で震える身体を必死で抑えながら立ち止まり、未だがくがくと震える足元を見た。








その靴裏には…








誰かが噛んだガムが…













 …と、これが俺が監獄で体験した恐怖体験だ。どうだ?結構怖かっt…ぶへっ!!?(痛)








銭「誰ですか。監獄内でガムなんか噛みながら仕事してた馬鹿は」








<完>















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