番外編

□ファーストコンタクト
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「こちらになります」


ある立派な、

誰が見ても二言目には『立派』といっ
てしまうほどの大きな研究所があった


その研究所は文明の発達を未だに衰えさせないこの世界で、まさに最先端をいく研究をするような、

いわゆる技術文明にたずさわる者ならばここで働く事を名誉とするようなところ


コッ、
コッ、
コッ、


身なりをしっかりと整えたいかにも立場が高そうな初老の男が、その研究所内の通路を歩く

ただ歩いているわけではない、時折後ろを振り返りながら、何かを後ろにいる人物と話しながら歩いていた


後ろを歩いていたのはある一人の女性、それにボディーガードらしきがっしりした体つきの男が二人

前を初老の男性、案内されながら女性、従属するように男二人と

はたから見れば明らかにその女性の位が高いのはわかった



しかし、しかしだ



この女性、見るからに若い

スーツを着こなしており、少々大人びて見えるとはいえ、それでも見た感じは17,8歳程

どう考えても前を歩く初老の男性の方が貫録的にも偉そうなものだが


そんな疑問もなんのその、決定づけるように初老の男性はやがて見えていたドアを開け、手のひらをさし示しながら女性へと入室を促していた

女性は促されるがままに部屋へと入る
続いてボディーガード、
最後に入ったのが初老の男性だ

女性は部屋に入るなり、その研究所独特の匂いに顔を少ししかめて周囲を見渡す


部屋は物がひとつもなければ子どもたちが走りだしそうなほどに広く、軽く見ただけでは奥の方に何があるのかははっきりとは分からなかった

なにやらゴチャゴチャとした機械が立ち並んでいる…、事はわかる

女性は何を表情に表すわけでもなく、一通り見まわしたあとに案内してきた初老の男性に向き直った


「ここが視察現場?」


逆に失礼になりそうなほどに冷めた態度で女性は淡々と言う

言葉を発するたびに空気が変わっていくように思える

初老の男性は少々焦り気味に口を開く


「いえいえ、とんでもございません、ここは視察の中の一つでして…」

「ふうん…?」


初老の男性は無理矢理作った笑顔で言うが、女性は変わり無い様子であった


あたかも


つまらない所ね、


と、ため息を周りに聞こえるように吐きながら女性は再度辺りを見回した

機械をいじくりまわしている人間、

女性の吐くため息が気に入らなかったのか、手を止めてチラッと睨み目で女性を見る人間、

ひたすらにPCを眺め続けている人間、

働いているという事をアピールしているのか明らかに動きのおかしい人間、


そのどれの人間を見ても、女性は冷めた目でそれをただただ見ていた

察するに偉い立場だというのは理解できたが、とても上に立つような人望は兼ね備えていないように見える

ということはどこかしらの令嬢ということか


さしずめ親に教育の一環として視察に繰り出されたが、
くだらない、
つまらない
などと考えているのだろう


今の態度がそれを顕著に表していた


「ささ、続いてはこちらです」


女性の同意を得るわけでもなく初老の男性はさっさと部屋のドアを開けて廊下へとでてしまう

この場にいてはまずいという、男性なりの配慮なのだろう

女性も返事をするわけでもなく、部屋はもう振り返ることなどなく、廊下へ続くドアへと足を向けた

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