永遠の自由落下
□再戦
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夜が終わろうとしていた。
いつもならまだ起きている者も少なく、静かな時間帯だが、今日は違っていた。
屋敷の裏には2代目剣帝と新入隊員の戦いを見物しに、多くの隊員が集まっていた。
もちろん、勝負の行方など初めから分かっている。いくら腕が立つとはいえ、新人が幹部にかなうはずもない。
ほとんどの者は新入隊員がずたずたに引き裂かれるのを見物しに来ていた。昨日ハヤブサと仲良くなった数名の者だけが、いくらかはハヤブサのことを心配していた。あくまで心配していただけであったが。
人だかりの中のぽっかりと空いた空間に、ハヤブサは立っていた。
動きやすそうな白い大きめのTシャツに黒いハーフパンツという、暗殺者というより運動部員のような格好。ハヤブサの雰囲気によくあった格好だった。
その格好に全く不釣り合いな鞘を腰に下げている。昨日は無かったものものだ。柄は、殆ど何も装飾のない、飾り気のないものだった。
不意に喧騒が止む。
朝露で湿った草の上を音も無く歩いてくる――――スクアーロの登場に、すべての隊員が口を閉じた。
「う”ぉぉい、よく逃げ出さなかったなぁ。」
静かな中に、その声はよく響いた。銀の双眸に好戦的な光を宿している。
「ちゃんと剣は用意できたんだろうなぁ?」
鞘を見れば、そんなことは一目瞭然だろう。それでもハヤブサは律義に頷き、柄を親指で押し上げて、ほんの少し刃をのぞかせた。
朝日が、草の上に最初の影をくっきりと落とした。
それが合図だった。
スクアーロは一瞬で間合いを詰め、横から薙ぐように剣を振った。
ハヤブサは後ろに飛び、刃先を寸でかわす。
スクアーロの剣撃が休むことなく襲いかかる。
ハヤブサはステップを踏みながら、そのすべてをギリギリでかわしていった。
「う”ぉぉい!逃げてばっかりじゃねぇかぁ!!」
斬り付けながら怒声を飛ばす。後手後手に動くハヤブサに苛立ちを覚える。この程度なら、3分と言わず、1分もしないで片づけられる。
つまらねぇ。
苛立ちをぶつけるように、一際強い一撃を放った。上から、叩き斬るように。
その時、初めてハヤブサが剣を抜いた。