スクアーロ短夢

□手紙
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親愛なるスクアーロ様へ




 新緑が青空に映える今日この頃…ごめんなさい、ちゃんとした手紙の書き方忘れちゃいました。なので書きたいことだけ書きます。

 隊長、これを読んでいる今、元気にしていますか?勿論、元気に決まってますよね!だって天下のスクアーロ隊長ですから。もし万が一にも隊長が元気じゃなかったとしたら、今すぐここから飛び出して励ましに行きますから、呼んでください。




 ところで、隊長は「バスケットボール」というスポーツを知っていますか?…ごめんなさい、知ってますよね。それでですね、そのバスケットでいっち番大切なことって何だかわかりますか?

 それって、ルーズボール、つまり「どちらのものでもないボール」をどれくらいとれるかっていうことなんですって。ずっと前に教わりました。

 それで、そのどちらのものでもないボールの代表格は、ゴールから外れたこぼれ球なんです。だからプレイヤーは必死こいてそれを拾いに行くわけです。

 ところで、そのボールをとるとき、もし相手が凄く大きかったりしてリバンドじゃ勝てないってとき、どうすると思いますか?





 死ぬんです。




 あ、わかりにくいですね。簡単に言うと、相手にぴったり体を当てて、相手が動けないようにする。そうすれば自分はボールを取りに行けないけど、相手だって跳ねたり手を伸ばしたりできない。どんなに弱くても関係ない。零れたボールは仲間が拾ってくれることを信じて、自分は相手と一緒に「死ぬ」んです。





 そういうことが当たり前の世界もあるんです。隊長は信じてくれませんでしたけど。






 私、ちょっと死んできます。

 ボスには許可をもらいました。

 絶望したわけでも諦めたわけでもありません。寧ろ逆です。希望に満ちています。だから、隊長やボス、ベル、フラン、ルッス、レヴィ、本部のみんなのことを信じて、抑えに行きます。

 本当は直接隊長に言いたかったです。でも、隊長に会ったら、きっと離れたくなくなっちゃうので。





 隊長、お願いします。勝ってください。その為に私はいるんです。

 白蘭を、討ってください。






 最後まで不甲斐ない部下でごめんなさい。もし来世があって、そこでも隊長に出会えたら、今度こそ完璧な部下になってみせます。

 今までありがとうございました。





 世界中のありったけの幸運とご武運を。





 それでは、この世界のことは任せました。







            天音


















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 …クソがぁ…

 世界?んなもんどうでもいい。

 ったく、本当に最後の最後まで…















「う”ぉぉぉい、刀小僧ぉ…」

「ん?なんだよスクアーロ、急に改まって」

「心して聞けぇ」





 間近に迫ったチョイスバトルに向けての今日の修行を終え、俺は焚火の向こうで横になっている山本に声をかけた。





「いいかぁ…死んでも負けんじゃねぇ。是が非でもなぁ。」





 お前らが来るのを待てずに散って行った奴がいんだぁ。俺の手で仇討してやれないことが歯痒い、それができねぇならせめて、





「おぅ!スクアーロとの修行だって無駄にしねぇ!親父の時雨蒼燕流も汚さねぇし、仲間の為にやりきって見せる。」













 あいつの最後の頼みは、叶えてやりてぇんだぁ。














 果たしてあなたの犠牲はこの勝利 










 天音。どうやら全部終わったらしい。

 俺は見たぜぇ。

 白蘭が消える所も、アルコバレーノが復活する所も。







 なぁ、未来が、この未来も変わったんなら、お前ももう帰ってきてもいいんじゃねぇかぁ?

 来世まで待てそうにもねぇんでなぁ…

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