スクアーロ短夢

□二人の起源
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 きっと神様は、スクアーロを作った直後に私を作ったんだね。







 そう言ったら、今まで真剣に剣を磨いていたスクアーロが整った顔を上げて、いつものように何でも見通しているような眼で見返してきた。






「どうしたぁ、急に」

「だってそう考えるとぴったりなんだもん」





 多分ね、神様は凄く一生懸命スクアーロを作ったの。細胞一個一個に愛情注いで丁寧に丁寧に作ってね、出来あがった時は嬉しかったろうなぁ。

 そんでね、その次に作られたのは私なの。スクアーロを一生懸命作った分、きっと足りない部品もあったし、神様も疲れてたから、こういう私になったんだ。






「だから私とスクアーロは一緒にいると丁度いいんだ」

「下らねぇ」





 一蹴したスクアーロは、すぐに剣に目を落とす。

 下らないかったなぁ。ぴったりだと思ったんだけど。

 …もしかして呆れられちゃった?

 ちょっとでも表情の変化を読み取りたくて、下から覗きこむように伺ってみる。

 「何やってんだぁ」ともう一回目を上げてくれるスクアーロ。少し笑ってた。






「まあ、俺のすぐ後に天音が作られたっつーのは強ち間違いじゃねぇかもなぁ。」

「?」

「先に俺が出来て、その俺に足んねートコは全部天音に多めに付いてんだぁ。」

「スクアーロに足りない所なんかあるの?」

「あんじゃねぇかぁ?」





 例えばなぁ…スクアーロは剣を置き、右手を伸ばしてきた。





「この髪とか目の色、」





 数回髪を梳かれ、下りてきた指は閉じた瞼をなぞる。鳩尾の上のあたりがこそばゆい様なむずがゆいような、不思議な感覚がする。





「後、あったかさとかなぁ」

「嘘、スクアーロの方があったかいもん」

「天音の方があったけぇ。ガキの方が体温高いっつーしなぁ」

「ガキじゃないもん!スクアーロの方があったかいんだから!」





 証明してやる!とスクアーロの横に移動する。それから隣に座って、ぴったり寄り添うようにした。研磨剤とシャンプーとスクアーロの匂いがする。布越しに伝わるスクアーロの熱は、やっぱりあったかい。





「ほらね、スクアーロの方があったかい。」

「いや、どう考えても天音だろぉ?それに、あったけぇってのは体温の話じゃねぇ」

「じゃあ何があったかいの?」

「…体温もあったけぇなぁ」






 最初から結構くっ付いてたけど、スクアーロが寄りかかってくるからもっと近くなった。

 これだけひっつくことなんてあんまりないから、ついでに腕にしがみついてみた。落ち着くなぁ。

 そうしていたら、またさっきみたいに髪を梳かれる感覚があった。見上げたら、こっちを見ていたスクアーロと目があった。普段は視線だけで人を殺せそうな目なのに今は柔らかい光を帯びている。

 その瞬間、心臓がきゅっとするなんて言うレベルを超えて急に忙しくなった。この感覚には何年経っても慣れることなんてないんだろう。






「…もしかしたら、スクアーロの言う通り私の方があったかいのかも。」






 正確に言うと、熱いのかな。スクアーロが近くにいるとき限定で、だけど。

 何も言わないスクアーロだけど、多分言いたいことは分かってくれた。スクアーロはそういう奴だ。

 頭をスクアーロに凭せ掛けて、ゆっくり目を閉じる。あったかいな、ほっとする。スクアーロってあっためたミルクみたい。なんて言ったら怒られてしまいそうだ。






 徐々に下りはじめた瞼は、最後にちらりと銀色を映しこんだ。光が遮られたのが分かった。






 あ、






 でも、春目前の午後の日差しとほっとするあったかさに誘われた眠気は、引っ込むことなくそのまま私を夢の世界へ引きずり込んだ。

 




 結局、どっちが足りないとか補ってるとかそういうのはどうでもいい些細なことなんだ。

 大事なのは、二人は一緒にいて丁度いいって言うことなんだから。

 失われる寸前の最後の意識が、私にこっそり教えてくれた。


































「何で談話室まで来てカス鮫と天音がいちゃ付いてんのみなきゃなんないわけ?」

「周りが見えてないわね」

「なぁ、あのバカップルサボテンにしていい?答えは聞いてないけど」

「だめよ、ベル。邪魔しちゃ悪いわ」

「せんぱーい、ミーも加勢しまーす」


















二人の起源は、




 起源何か分かんないけど、



 結論、二人は一緒にいるべき!!





「スクアーロってもしかして…隠れロマンチスト?」

「な”っ!てめぇが先に言いだしたんだろぉがぁ!」

「ロマンチストでもなんでもスクアーロはかっこいいからいいんだけどね」

「…お前なぁ…」

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