スクアーロ短夢

□取り敢えず開いてみようか
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「ねえベル、私、真剣なの、真剣に好きなの」

「ししっ、俺も天音のことだーい好き」












 …ちょっと待てぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”!!!!!






 ごく自然にノブを捻って潜り抜けるはずだった扉。急遽予定変更。そのまま蹴破らんと(自分で言うのもなんだが)長い足を振り上げ…






 全身の力が抜けて、へなへなと座り込む。

 何だこれ、どうなってる、俺。これじゃ女みてぇじゃねぇか、傲慢なる鮫はどこに行った。

 好いた女が別の男に愛を囁いてるってのに、怒鳴りこむことさえできない。

 …クソがぁ、ここにいたら聞きたくねぇもんまで全部聞こえちまうってのに…足が、動かねぇ。








「は?ベルに好かれても嬉しくないよ、苦労症の私の苦労が増えるだけじゃん」

「けっ、相変わらず減らねー口。黙ってりゃ姫にしてやらないこともねぇのに」







 …ん?

 抜け切った体の力が若干の回復の兆しを見せる。立ち上がれる気がする。

 今あの場に割って入れば、なんとかこの状況を打破できるかもしねぇ。つーかむしろ今しかねぇ!

 …動け俺の足ぃぃぃ!!









「もー!相談に乗ってくれるって言ったから話してるのに!!」

「あー、なんだっけ、相談って。聞いてなかったわ」

「聞けよ!さっき言ったし!!」

「もっかい言えば?今度は聞いてやるかもしんないし?」

「さ、最後だからな!これで聞いてくれなきゃルッス姐に相談するからな!!」

「早く言えよ」









「うん、どうやったらスクアーロ様のお嫁さんになれるかなぁって」










 !!!!????

 今天音の奴…

 …やべぇ、さっき戻った力、全部流出しちまった…










「あー、それ?相談って」

「そうだよ悪いか!」

「恥じらいも何もねぇな。嫁っつーより旦那みてぇ」

「だってここにスクアーロ様いないもん。私の女の子モードはスクアーロ様がいないと発揮できないの、そういう仕組みなの!ベルごときに恥じらえるほど乙女じゃないし?」

「何それ、喧嘩売ってんの?」

「物価の高騰で高めの値段設定となっておりますが、奥さんお一ついかが?」

「誰が奥さんだよ。…あーあ、萎えた」

「ベルが萎えようが何しようがどうでもいいけど、相談のってくれるんでしょ?」

「それ相談してる奴の態度?もっと殊勝にできないわけ?」

「…うーん…………無理、かなぁ…」

「今の間なんだよ、どうせ最初から考える気なかっただろ」

「まーね。」

「…さっきの喧嘩、今買うわ」

「ごめん売り切れた、相談乗ってくれたら買ってあげる。」

「知ったこっちゃねーし」

「えー、じゃあ私ザンザス様の部屋に逃げ込んじゃうし。働きに来るんならいつでも来いって言ってくださってるし」

「ちっ。…なんだっけ、カス鮫?」

「いやスクアーロ様」

「嫁になるとかちょー簡単じゃね?」

「え?!ベル、見直した!やっぱあんた王子様だ!どうすればいいの??!!」

「婚姻届に名前書いてイタリア政府に出す」

「そこじゃねーよ!!そこに至るまでの過程だよ!」

「今時役所のサイトにアクセスすれば用紙は印刷できんじゃね?」

「もっと前!大事な箇所いっぱい抜けてるし!」










 ベル、頼むからまともなことを言ってくれぇ…

 出来ることなら、その話題から離れてくれ。俺にも心の準備っつーもんが、







「めんどくせー…もう、諦めちゃえば?」








 こんのクソガキがぁぁぁぁぁぁぁ!!






「諦めない!!天音、強い子!!」





 そうだぁ!諦めんじゃねぇ!






「んで、今カス鮫とどこまで進んでるわけ?現状分かんねーと相談乗ってやれないけど?」

「どこまでって?」

「例えば、ガキできたとか」






 ぶっ!






「まっさかー。」

「んじゃ、やったとか」

「全然」

「キスは?」

「とんでもない」

「…じゃ、手繋いだとか」

「滅相もない」

「…なー、まじでどこまで?何もしてねーじゃん」

「うん、廊下で会うと挨拶してもらえるようになった」










「お前、数段階抜けてるどころじゃねーよ、百以上抜けてるっての」

「…だから恥を忍んでベルごときに相談してんじゃないか!」

「ふざけんな、ここまでどーでも良い話聞いてやってんだから感謝しろっての」

「しない。何の解決にもなって無いじゃん」

「問題多すぎて解決しきれねーの」

「…そんなに?」

「もち」

「…諦めちゃおうかな」

「そーそー、それが最良の選択だって」










 は?!

 ふざけんな!!簡単に諦めてんじゃねぇ!!













 お前は強い子だぁ!!













「お嫁さんじゃなくて、彼女目指そうかな…」










 か、彼女…














「…間違っちゃないけどな」

「ベル、どうしたらいいだろう?」

「知らねー。三回回ってワンって言ったあとに土下座したら良い方法教えてやろうか?」







「ワン」





 う”ぉぉい、まじでやってんのかぁ…?

 そこまで好かれてるってことなのかぁ?

 天音がそこまでしてくれてんのに、俺ときたら談話室の前に座り込んでるだけじゃねぇかぁ。








 本当は、俺の方から動かなくちゃなんねぇ。それ位分かってるし、何回もそうしようとしてきた。けど、その度に足がすくんだり、声が出なくなったり。

 もうわけわかんねぇ。

 自分がここまで情けねぇ奴だとは思わなかった。思い立ったら即行動するような男だと思ってた。
















 いや。

 今からでも遅くねぇ。俺は変わるんだぁ!

 まず、ここから一旦離れて…





 ってこれだから駄目なんだぁ!!!!





 立つ。そんでこのドア開ける。天音に、はっきり言う。

 そんだけのことだぁ、できねぇ筈がねぇ。

 俺は、俺は…
















 スペルビ・スクアーロだぁぁぁ!!!!


















「…まじでやるとか、天音ってやっぱ馬鹿?」

「何とでも言え。ほら、やったら教えてくれる約束でしょ?」

「…しかたねーな。問題山積してっけど、一個だけ教えてやるよ」

「うん!」










「そこのドア、開けてみ?」





























 …どうする、俺ぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!










取り敢えず

開いてみようか



その扉と、重たい口を、さ






  












「ス、スクアーロ様…!!!」

「す、す、す…!!!!」
















 だめだこりゃ



 

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