スクアーロ短夢
□夏の終わり
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熱帯夜。
殆どの住民が寝苦しい夜を過ごす中、一つだけまだ煌々と灯りを放つ窓があった。
「スクアーロ…」
「あ”?」
部屋には、机に向かう柄の悪い少年1名、ベッドに転がった大人しそうな少女1名、計2名。
「ねーえ、まだ終わんないの?」
「…後半分だぁ」
「えー…」
少年の前には2冊のノート。可愛らしい字で綴られた文字を、もう1冊のノートに乱れた文字で書き写していく。少年はこの不毛な作業を延々3時間も続けていた。
「もう、なんで始業式の10時間前まで宿題忘れてられるのかな…」
「しょうがねえだろぉ、忙しかったんだからよぉ。…よぉし!これで数学も終わったぜぇ!」
「写してるだけは終わったって言わない」
少女の小言チックな言葉にも動じずに次の教科を用意し始める少年、基いスクアーロ。
ただ眺めているのにもそろそろ飽きてきた少女は、そっと少年の後ろへ忍び寄った。肩越しに少年の手元を覗きこむ。
「ってちょっとスクアーロ!」
「あ”?」
「流石に日記はばれるから!!ていうかスクアーロの日記白っ!」
「天気は写してもばれねえだろぉ?」
「そりゃばれないだろうけど…」
「それによ、」
くるん、と回転いすを回して向き直った少年は、にっと笑った。
「俺たちの場合、中身も大体一緒だからなぁ」
「…本当、スクアーロには叶わないな」
二人で過ごした夏が終わるまで7時間弱。少女の許しを得て、少年は再び不毛な作業に没頭するのだった。
夏の終わり
いつの間にか眠りに落ちていた少女が目を覚ました頃、少年の戦いは漸く幕を閉じた。
「おはよ、お疲れ様」
「終わんねぇかと思ったぜぇ…来年もよろしくなぁ」
「だめ。次は計画的に自分でやること。そんな嫌そうな顔しないの!」
「…わぁったよ」
渋々頷いた少年に少女はふっと微笑んだ。
「うーん…他の教科はダメだけどさ、でも。」
「…あ”?なんか言ったか?」
夏が終わるまで、後3時間。
「来年も、日記くらいは写してもいいからね」