ぎんたま

□☆
2ページ/2ページ





うるんだ目を、神楽はこすりました。
流れ星におねがいすると、ねがいがかなうとききました。
それを教えてくれたのは、神楽のお兄ちゃんです。
いろんなことを知っていて、やさしいお兄ちゃん。神楽はお兄ちゃんのことがだいすきでした。
お兄ちゃんはこのごろしゅぎょうに行っていて帰って来ません。いつかお父さんをこえるんだ、とわらっていました。
お兄ちゃんが早く帰ってきますように。
神楽は流れ星にお願いしました。




「かぐら」
気配がして、神楽はふりかえりました。
そこにいたのはいまいちばん会いたい人です。
みつあみと、頭のてっぺんのぴょいんとしたやつ。にこにこ顔といえば……。
「にいちゃん!」
神楽のお兄ちゃんがそこにいました。
にこにこしながら、優しく神楽の頭を撫でます。
「ただいま神楽」
「おかえり兄ちゃん! いつ帰ってきたアルか」
「さっきだよ。ちょっと近くまで寄ったからさ」
神威は神楽の横に座りました。
その体にはたくさんのきずがあります。
しゅぎょうはとてもつらいようでした。
「やあ、今日はよく晴れてるね。ここでこんなにたくさんの星みたことないよ。すごいな」
「ウン。すごいアルな」
神楽はうなずきました。
おねがいをきいて、お兄ちゃんを帰してくれるなんて。すごいにきまっています。
しばらく二人はしずかにもえる星をながめていました。
「……神楽」
「なにアルか」
「俺さ、すごい技が使えるようになったんだ。見たい?」
「ウン! みたい!」
神楽が元気に答えると、お兄ちゃんは立ち上がりました。
夜空に両手を伸ばします。
「とりゃっ」
かけ声とともに、神威は腕をふりました。
すると、夜空に流れ星がふりました。
「ふああ」
神楽はおどろくことしかできません。
いったいどうやっているのでしょうか。
お兄ちゃんが手を動かすたびに、びゅんびゅんきらきら、星が流れていきます。
「ほいっ」
お兄ちゃんは大きくうでをふり、しきしゃのようにしました。
たくさんの星が、まるで滝のように落ちてきました。
「わああ」
お兄ちゃんにはなんでもできます。
とてもすごいです。
こんなお兄ちゃんといつまでもいっしょにいれたらいいのに。
神楽は思いました。
けれどそれはかなわないことでした。
神楽の一族が、夜兎であるかぎり、かなわないことでした。
「にいちゃん。ありがと」
「どういたしまして」
お兄ちゃんが笑いました。
これもまぼろしでした。




神楽は目を覚ましました。
そこはベッドの上で、雨の降る朝でした。
長い夢をみました。
お兄ちゃんが帰ってくる夢です。
とても幸せな夢でした。
夢でしかありませんでした。
もう一度、同じ夢が見れたらいいのに。
神楽は目を閉じましたが、同じ夢は二度と見ることはありませんでした。







end
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ